筋トレ器具で足を鍛えるために押さえておきたいポイントを徹底検証
足を鍛えるために最も効果的で重要な種目はバーベルを担いでのスクワットです。これは今後も決して変わることはありませんが、足は非常に多くの筋肉で構成されていますから、スクワットだけでは足りません。多角的に鍛える必要があります。そのために役立つのが各種の筋トレ器具です。
足を鍛えるための代表的な筋トレ器具の特徴や押さえておきたいポイントについて徹底検証してみたいと思います。
レッグプレスマシン
レッグプレスマシンは足の筋トレ器具の中でも最もスタンダードなものです。レッグプレスマシンには垂直式、水平式、45度に角度がついたものがあります。これらのうちで本格的なトレーニーが好んで使うのが45度のタイプです。
垂直式タイプ
レッグプレスマシンとして最初に開発されたのが垂直式のものです。上下にウエイトを上げ下げするので垂直式と呼ばれています。
このタイプは態勢に少々無理があることもあって、足の前面の大腿四頭筋に効かせるのが難しいです。どちらかと言えば、大殿筋から大腿二頭筋の方に効いてしまう可能性が高いです。
ウエイトの付け替えがやりにくいのも難点です。かつては公共施設を中心に設置されていましたが、現在ではほとんど見られなくなってしまいました。
水平式タイプ
水平式のレッグプレスマシンの場合、差しピンタイプのものが多いです。
差しピン式のものは構造上、あまり高重量は扱えません。そういう意味で初心者向きなタイプのレッグプレスマシンとも言えます。
筋力が強くて重量が足りなくなった場合、ウエイトスタックに重量を足すこともできますが、それにも限界があります。差しピン式のマシンのウエイトスタックに重量を足す場合、せいぜい20キロまでにしておいた方がいいでしょう。
それ以上つけることも可能ですが、マシンが壊れる可能性があります。実際、ウエイトをつけ過ぎてマシンが壊れる事故が少なくありません。
重量の追加は20キロまでと書きましたが、これはスポーツクラブの内部で決めている自主ルールであって、メーカー側が認めた数字ではありません。メーカーとしてはユーザーが勝手にウエイトを追加するのを認めていません。
筋トレマシンは設計段階で安全率を考慮して多少ウエイトが過重になっても大丈夫なように作ってはありますが、もともと設定されている重量に範囲内で使用することが推奨されています。外国製のマシンには必ず英語の注意書きで「決して重量を改変しないこと」と表示されているのはそのためです。
必要以上に頑丈に作ることは可能ではあっても、その分コストが高くなりますから、鋼材の厚さや強度など、必要十分なレベルに抑えられていると考えた方がいいでしょう。
45度タイプ
現在、レッグプレスマシンで最も普及しているのが45度のタイプです。
動きとしては垂直式や水平式と似ていますが、45度にすることで足の前面の大腿四頭筋によりダイレクトに効かせやすくなっています。
このマシンが普及したことで、ボディビルダーの足の発達が目覚ましく向上しました。スクワットと組み合わせることでかなりの効果が期待できます。
45レッグプレスマシンはかなりの高重量が扱えますが、それはケガの危険が大きくなることでもあります。特に痛めやすいのが腰です。
人によっては高重量で深く降ろし過ぎると腰を痛めます。どこまで深く降ろすべきかは大殿筋から要背筋、足首の柔軟性によって個人差があります。マシンの可動域いっぱいまで降ろして大丈夫な人もいれば、かなり浅くまでしか降ろせない人もいます。
無理に降ろすと危険ですから、軽い重量で試してみて、お尻が決して浮かないところまでにしておきましょう。
スクワットもそうですが、深ければいいというものでもありません。
少しずつ柔軟性が向上させていけば多少深く降ろせるようになる可能性もありますが、無理は禁物です。
ハックマシン
45度レッグプレスマシンと並んで、足の筋トレ器具の代表的なマシンがハックマシンです。レッグプレスマシンでは深く降ろせない人でもハックマシンなら比較的降ろしやすいです。しかし、これもやはり個人差がありますから、軽い重量でどこまで安全に降ろせるかを十分に確かめるようにしましょう。
現在普及しているハックマシンは45度のものが主流ですが、かつては45度ではなく、もっと角度が急なものが多かったです。1970年代後半に45度のものがゴールドジムに設置されてから、大きく普及しました。
かつて、足がもの凄く発達したトム・プラッツというボディビルダーがいました。1981年のミスター・オリンピアで第3位に輝きましたが、世評では圧倒的に優勝にすべきだったとの声が多かったです。この試合は八百長だったとの声まであったぐらいです。
トム・プラッツがそれほど強いインパクトを観衆に与えたのは、ずば抜けた足の発達があったからです。当時、それまで足の発達で到達できるとされた常識のレベルをはるかに超えた異次元の凄さでした。舞台で横に並んだ世界のトッププロたちの倍ぐらいに見えました。当時としてはもちろん、現在のレベルで見てもかなり凄いです。
現在のプロボディビルダーたちはもの凄い足をしていますが、トム・プラッツが1981年当時の常識の壁を遙かに超えたことの影響が大きいです。
一人が壁を破ると後に続く選手が出るのはボディビルに限らず多くのスポーツで見られる現象です。重量挙げや陸上競技などの記録もそうして生まれています。
トム・プラッツは見た目だけでなく筋力もずば抜けていて、完全なフルスクワットを272キロで20回以上繰り返すことができました。1回できる最高重量が363キロでしたから、いかに筋力が強かったかがわかります。トム・プラッツが最も気に入っていた足の種目がダントツでスクワットでしたが、2番目に好きだったのがハックマシンでした。
トム・プラッツのハックマシンの使い方は変わっていて、現在のように足の裏全体をボードにつけて運動するのではなく、つま先立ちでシシースクワットのような動作をしていました。その方がより可動域が広くなって、運動量が多くなりますが、よほど膝が強くて柔軟性がないとケガの危険があります。ハックマシンが開発された当初はそういう、シシースクワットの変形のような動きが推奨されていましたから、現在の我々のやり方の方が応用と言える面もあります。
ハックマシンと上記の45度レッグプレスマシンが普及したことで、ボディビル選手の足は格段の進歩を遂げるようになりました。
レッグエクステンションマシン
足の筋トレ器具の定番のひとつがレッグエクステンションマシンです。足の前面の大腿四頭筋のカットと呼ばれる、鋭く深いキレを出すのに効果的です。
スクワットの前に足全体のウォーミングアップとして行なう人もいますが、スクワットの前にやるのであれば、量も強度も軽くした方がいいです。追い込み過ぎるとせっかくのスクワットのためのエネルギーが下がってしまいます。
レッグカールマシン
レッグエクステンションマシンと並ぶ足の筋トレ器具の定番がレッグカールマシンです。
足の大腿四頭筋の裏側にある大腿二頭筋を集中的に鍛える筋トレ器具です。
足のトレーニングの際には足の前面の大腿四頭筋だけでなく、必ず裏側の大腿二頭筋も鍛えるようにしましょう。見た目のバランスだけの問題以外に、前面だけを鍛えて裏面の鍛え方が弱いと、筋力のバランスが悪くなってケガの原因になるからです。
特に陸上競技のように、走るスポーツの場合、背中や大腿二頭筋などの裏側の筋肉が競技能力に大きく影響します。
レッグカールマシンは次の3種類がありますが、足を鍛えるメニューでは最低でも1種目はやるようにしましょう。
1.うつ伏せで行なうタイプ
最も基本的なレッグカールマシンのタイプがこのうつ伏せで行なうタイプです。
レッグカールマシンの中でこのタイプが態勢的にも最も筋力を発揮しやすく、効果の点でも一番でしょう。
足を引っ掛けるパッドの位置を身長や足の長さに合わせて調節します。位置が遠過ぎても、近過ぎても、動きが不自然になりますから、最適な位置に合わせるようにします。
2.片足で行なうタイプ
片足を行なうタイプは立った状態で片足ずつ交互に行ないます。片足が終わったらすぐにもう片方で行ないます。両足が終わったところで初めてインターバルを取るようにします。
片足が運動中はもう片方の足は休んだ状態ですから、決まったインターバルなしで交互に続けてもかまいません。
3.座った状態で行なうタイプ
座った状態で行なうタイプのレッグカールマシンもあります。
ストレッチ感がうつ伏せや片足タイプほどではないのは、座った姿勢であることで、大腿二頭筋をあらかじめストレッチさせられないからです。
内転筋マシン
太ももの内側の筋肉が内転筋です。内転筋には大小5種類あり、股を閉じるなど、足を内側に動かすための筋肉群です。これらの内転筋を鍛えるのが内転筋マシンです。
足を鍛える順番としては、大腿四頭筋、大腿二頭筋、内転筋の順番になりますが、内転筋を単独でマシンで鍛えなくても、それまでのスクワットに続く各種の種目で間接的にかなり内転筋にも効いていますから、必ずしも必須の種目なわけではありません。必要に応じてメニューに加えるかを考えましょう。
スミスマシン
足の筋トレ器具としてもかなり汎用的に使えるのがスミスマシンです。軌道が固定されているため、バーベルのように、軌道を調節しながら挙げる必要がないので、初心者でも運動しやすく、各種目でターゲットの筋肉に効かせやすいメリットがあります。
垂直式タイプ
スミスマシンにはウエイトが垂直に上下するタイプと足の運動の軌道に合わせて角度がついているものがあります。
垂直式タイプの方が胸や肩などの種目にも使える点で汎用性があります。
バーベルでのスクワットが体型のせいで効かせにくい人でも、スミスマシンであれば足の位置を前にすることで効かせやすくなります。
バーベルでスクワットを行なう場合、重量が垂直に落ちるため、足の位置を前に出すことができませんが、スミスマシンであればバーの軌道が垂直に固定されているため、足を前に出すことができ、バーベルスクワットでは深くしゃがめない人でも無理なく深く降ろせるようになります。
スミスマシンは足の筋トレ器具として、スクワットだけでなく、フロントスクワット、ランジなども効果的に行なえます。
足用に角度に傾斜があるタイプ
スミスマシンには足を鍛えやすいように、角度をつけて傾斜した形にしてあるものがあります。スクワットを行なうには角度がある方が効かせやすいです。
しかし、垂直式タイプのような汎用性がないのが難点です。角度があることで、斜めにウエイトが動くため、肩や胸を鍛えるために使うと、負荷が斜めに逃げてしまいます。
カーフマシン
ふくらはぎを鍛えるための筋トレ器具がカーフマシンです。
カーフマシンは3種のタイプがあります。ふくらはぎの筋肉は腓腹筋とヒラメ筋に分かれており、腓腹筋はさらに外側と内側に分かれています。
1.スタンディングカーフマシン
ふくらはぎの腓腹筋を鍛えるために最も効果があるのがスタンディングカーフマシンです。名前の通り、立った姿勢で行なうカーフマシンです。高重量が扱える点でも効果が高く、最も基本的なカーフマシンです。
2.ドンキーカーフマシン
スタンディングカーフマシンと同様にふくらはぎの腓腹筋を鍛えるのに効果的なのがドンキーカーフマシンです。
上体を前傾させて、腰に直接重量を支えるため、要背筋にかかる負担がないので、腰が弱い人でもやりやすいです。また、上体を前傾させた姿勢であるため、腓腹筋をストレッチさせやすいメリットがあります。
3.シーテッドカーフマシン
ふくらはぎのヒラメ筋を鍛えるための筋トレ器具です。
ヒラメ筋は膝を90度に曲げることで鍛えやすい筋肉であるため、座ったままの姿勢で動作するように作られています。
まとめ
足を鍛えるための筋トレ器具が最も進化発展したのが1970年代後半です。それ以前と以後では足の筋トレ器具の充実度が格段に違います。上記の45度レッグプレスマシンや45度ハックマシンがカリフォルニアのゴールドジムに設置されたのもこの時期です。
この1970年代後半を境にして足の筋トレ器具が急激に進化して、その後は大きく変化していません。その後もいろいろな器具が開発されてはいますが、大きな意味ではこの時期に完成したと言えるでしょう。
45度ハックマシンはボディビルの世界選手権であるNABBAユニバースで4度も優勝したビル・パール氏のジムには1960年代にすでにありましたが、パール氏が自作したもので、まだまだ普及してはいませんでした。アーノルド・シュワルツェネッガーが現役だった時代にはまだ45度レッグプレスマシンも45度ハックマシンもありませんでしたから、その状況であれほどの足を作り上げたのは立派です。
現在ではボディビルの試合に出ている日本人選手たちもかなり立派な足をしています。サプリメントが進歩したこともありますが、それ以上に、多角的に足を鍛えられるマシンが普及したことが大きな理由です。
20年ぐらい前であれば、一部のジムにしかなかった筋トレ器具を多くの場所で使えるようになりました。これが選手層の底上げに役立っています。
ゴールドジムのような民間のスポーツクラブだけでなく、大学や公共の体育館の筋トレ設備が昔に比べて格段に良くなっています。そういう意味で我々は筋トレをするのに極めて恵まれた時代に生きていると言えるでしょう。