理学療法士が教える大腿四頭筋の鍛え方
みなさん大腿四頭筋がどこの筋肉かご存知ですか?そうです、太ももの前の筋肉です。私たちが「立つ」「歩く」「走る」という動作を行う上で非常に大事なこの大腿四頭筋。皆さんがご存知のひざのお皿の骨は実はこの筋肉の中にあるんです。
人間の体は低エネルギーで効率的に動作を行うために上手に出来ていています。その仕組みを少し理解することで、より効果の高いトレーニングが行えます。
解剖学的構造
大腿四頭筋はその言葉の通り、4つの筋肉から構成されています。大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋と呼ばれるものです。この4つの筋肉それぞれがバランスよく働くことで、ひざ関節の曲げ伸ばしや、股関節を曲げる働きをします。
このバランスという言葉がトレーニングを行う上では本当に大切です。特に日本人の骨格はひざ関節に痛みが出やすい、膝を前から見るとローマ字のOの形をした膝をしています。これは床上での生活が主だった生活習慣から来ていますが、この大腿四頭筋が弱くなると、膝関節に痛みが出やすくなります。普段の生活から意識的に大腿四頭筋を鍛えることで、歩く力を強化することが出来ます。
ここで忘れていけないのは、大腿四頭筋の反対側を支えるハムストリングスの力です。大腿四頭筋とハムストリングスはいつもお互いを支えあって働いています。自分の体にどちらの筋肉が必要なのか、どこを鍛えたらいいのか分からない、という人も多いのではないでしょうか。その評価の方法とトレーニングの方法を以下に説明していきます。
どこの筋肉トレーニングが必要なの?その評価の方法は?
さて、大腿四頭筋が実は4つの筋肉から構成されている、ということを前章でお話しましたが、あなたの太ももの筋肉はいかがですか。まずは自分で触って確かめてみましょう。
お皿に手をあてて、親指の下にくるのが内側広筋、小指の下にくるのが外側広筋、その真ん中にあるのが大腿直筋です。中間広筋は実は大腿直筋の下にくるので、直接触ることは少し難しいでしょう。
さて、あなたのお皿の位置は内側に寄っていますか、外側に寄っていますか?ほとんどの人が真ん中と答えるのではないでしょうか。それが正常な状態です。しかしここで内側、外側に偏りがある、左右のお皿の位置が違う気がする、という場合は特別なトレーニングメニューが必要になってきます。
評価に基づくトレーニングの方法
お皿が真ん中にあるバランスのとれた大腿四頭筋の人
現状では健康的なひざと言えるでしょう。痛み等の問題もなければ、ひざ全体を動かすような運動で、かつ自分の体重を利用した運動が適しているでしょう。
もちろん年齢や、性別にもよって運動の負荷量は異なってくるので、ここでは運動の方法のみ紹介するでの、簡単すぎる、難しすぎる、と思った場合は、自分の負荷量を調節して取り組んでみてください。
スクワットが効果的
どこでも実践でき、準備もいらない、とってもおススメの方法です。両足を肩幅程度に広げて、安定した位置で立ちます。ひざがしっかり前を向いていることを確認して、ゆっくりと深呼吸しながらスクワットしていきます。
このとき多くの運動好きの人たちがやりがちな方法が、とにかくがむしゃらに素早く回数を行う方法です。しかし実は運動はゆっくり行う方が難しく、関節への負担も少なく行えます。落ち着いて、おなかにしっかりと力を入れながらゆっくりとスクワットしてみましょう。素早く運動するよりももっと疲れを感じられるはずです。
お皿の位置が少し外側にあると思った人
日本人では健康なひざに次いで、これに当てはまる人が多いと思います。内側広筋の筋力低下が原因です。
もちろんスクワット等の四頭筋全体を動かす運動も間違いではないですが、ひざ関節を傷めないためにも、まずは内側広筋を鍛える運動を先に行うと、より効果的に大腿四頭筋を鍛えることができるでしょう。
足を伸ばすトレーニング(床に座って行う運動)
この運動にはバスタオルや小さなボールなど、何かしらひざの下にあてがうものが必要です。特別なものを用意する必要はないので、バスタオル等があればそれを使いましょう。
では、まず床に座って両足を前に伸ばします。体は起こした状態です。ひざの下にバスタオルを丸めたものや、ボールなど、ひざが少し曲がる姿勢を作ります。そこからひざをゆっくり伸ばしてみましょう。
本当に少しのトレーニングなので、このトレーニングに意味があるのか、と思われる方も多いと思いますが、このトレーニングが本当にひざを守るためには大切なトレーニングになってきます。根気よく、毎日続けていきましょう。
足を伸ばすトレーニング(立って行う運動)
基本的に作る姿勢は床に座って行うトレーニングと同様です。
まず、壁に背を向けてまっすぐ立ちましょう。そこからひざを20度ほど(少し下に下がる程度)曲げます。そのまま10秒間姿勢をキープし、また元の姿勢に戻ります。
このトレーニングは座って行うトレーニングよりも自分の体重がかかっている分、負担のある運動になります。注意点は壁から背中が離れないようにまっすぐと下に下がることです。壁にもたれかからないようにも注意しましょう。
お皿の位置が外側にあると思った人
外国人の骨格によくみられる、ひざを正面から見たときにローマ字のXの形をしている人がこれに該当することが多いと思います。
外側広筋の筋力低下により、お皿が外側に寄ってしまっている、ということが考えられます。日本人ではお皿が外側に寄っているという人は少ないかもしれませんが、ここでは一応外側広筋を鍛えるトレーニングも紹介しておきます。
椅子からの立ち上がりのトレーニング
用意する椅子は自宅にあるもので構いません。理想的なものは、座ったときにひざが90°曲がる姿勢がとれるものですが、ご自宅にあるもので気軽に取り組んでみましょう。
ある程度のスペースを椅子の前に作ります。椅子にまっすぐ座ったら、お辞儀をするように体を前へ倒しながら立ち上がります。同様に、まっすぐ立った状態から、またお辞儀をしながらゆっくりと腰掛けます。
皆さんがまさに日ごろ行っている動作がそのままトレーニングとして使えます。
大腿四頭筋のトレーニング頻度
毎日どの程度の運動が正しいのか分からないという人も多いのではないでしょうか。
初回の運動は、少し疲れたな、と思う程度でやめておきましょう。
いきなり後負荷なトレーニングを取り入れることで、関節にも負担をかけてしまいます。
トレーニングで大切なことは継続することなので、今日10回できたら明日は13回やってみよう、など、少しづつ負荷量は調節していきましょう。また、基本的には毎日の継続が理想的ですが、それでも辞めてしまうよりは頻度を落として継続した方がいいです。
毎日が難しいようであれば、週に2,3回だけでも効果は出てくるはずなので、気長に取り組んでいきましょう。
初回の運動で次の日、または翌々日に筋肉痛がきたぞ、という人は少し頑張りすぎてしまったかもしれません。少しだけ負荷を落として、体に負担のない程度に取り組んでみましょう。
規則正しい食生活
最近のトレーニングで特に重要視されているのが、栄養源の確保です。トレーニングの前にプロテインの摂取が推奨されています。大腿四頭筋は体の中でも一番大きく、エネルギーを消費する筋肉です。
もちろん運動だけではなく、バランスの取れた栄養素の高い食生活を送ることで、より健康な大腿四頭筋を手に入れることができると言えるでしょう。
まとめ
今回は内側広筋、大腿直筋、外側広筋に焦点を絞って評価の方法とそのトレーニングの方法を紹介してきました。
トレーニングで大切なことは、どれだけ自分の体に関心を持って、継続して取り組めるかということです。
誰かが老後には筋肉と金を残せと言っていましたが、最近では若い子でもかなりの筋力低下がみられるケースも稀ではありません。
快適で健康な生活を送るためには、トレーニングと正しい食生活が必須です。皆さんもこの機会にもう一度ご自身の体を見つめなおしてみてはいかがですか。