インクラインプッシュアップを徹底解説【台の高さ・角度・肘の使い方】
腕立て伏せは自宅でもできる効果的な筋トレ方法ですが、筋力が弱い人や女性にとっては意外にハードルが高いようです。
そういう人におすすめなのがインクラインプッシュアップです。
床に手をつくのではなく、椅子やベンチに手をついて運動することで、負荷を軽くして、筋力が弱い人でもやりやすいプッシュアップ法です。
女性のシェイプアップ効果も絶大です。初めて筋トレを始めるための入門用としてもおすすめです。
インクラインプッシュアップの効果的な台の高さ
インクラインプッシュアップは台に手をつくことで普通の腕立て伏せよりも負荷を軽くする方法です。
台の高さと強度の関係と台として使えるものについてご説明しましょう。
台が低いほど強度が高くなる
インクラインプッシュアップでは台が低いほど強度が高くなります。普通の腕立て伏せでは床に手をついて運動しますが、この状態がインクラインプッシュアップよりも負荷が重い状態です。さらに負荷を高くするには足の位置を高くするなどして支えている腕や大胸筋にかかる負荷を大きくします。
インクラインプッシュアップはその逆で、台に手をつくことで体を支えている腕などの筋肉にかかる負荷を減らす方法です。そのため、台が高くなるほど強度が下がります。極端な話、壁に対して腕立て伏せを行なうのが最も負荷が弱い状態になります。
それでも負荷がゼロにはなりませんから、筋力が非常に弱い人はそのやり方から入る方法もあります。
フラットベンチ
筋トレで使うフラットベンチはインクラインプッシュアップの台として使いやすいです。本格的な筋トレ用に作られているわけですから頑丈ですし、安定感もあります。ジムにあるフラットベンチだけでなく自宅筋トレ用のフラットベンチもインクラインプッシュアップの台として非常に使いやすいです。
フラットベンチの高さはベンチに寝た状態で足を床につくぐらいの高さですから、インクラインプッシュアップで使う場合、比較的低い高さになるため、強度としては高めになります。
椅子
自宅でインクラインプッシュアップを行なう場合、使いやすいのが椅子です。
椅子を使う場合、高さ以外にも幅と安定性に気をつける必要があります。足場が動きやすいビジネス用の椅子では運動中に動いてしまって危険ですので、足場が決して動かないものを使いましょう。
椅子の場合、一脚だけでは幅が狭いなら、二脚並べて使う方法もあります。高さとしては普通の椅子であればフラットベンチよりもやや高いので、インクラインプッシュアップの強度としてはその分、弱くなります。
テーブルや机
家にあるテーブルや机もインクラインプッシュアップに使えます。これらも椅子と同様、足場が動かないかどうか、強度的に安定しているかを確認してから使いましょう。
高さが椅子より高い分、その分、運動が楽になります。テーブルから始めて、筋力の伸びに合わせて台の高さを低くしていくのがやりやすいでしょう。
インクラインプッシュアップで大胸筋上部を鍛えられるか
大胸筋は上部、中部、下部に分かれます。この中で上部の部分について、インクラインプッシュアップで鍛えられるかについて検証してみましょう。
大胸筋上部を鍛えるための条件
大胸筋の上部を発達させるには、上部の部分に負荷をかけることが不可欠です。そのためには大胸筋の上部に負荷がかかる態勢で運動しなくてはなりません。
インクラインベンチプレスやインクラインダンベルプレスのように大胸筋上部を鍛える専門種目を見るとわかりますが、これらの種目では上部の収縮方向に対してバーベルやダンベルを押し上げて、刺激しています。だからこそ大胸筋上部が鍛えられます。
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インクラインプッシュアップの動作から検証する
それに対してインクラインプッシュアップではベンチや机といった台に手をついて運動します。
足は床につけていますから、体の角度からして大胸筋の中部から下部の方向に対して負荷がかかることになります。
大胸筋の上部に対しては直接的に負荷がほとんどかかりません。インクラインプッシュアップでは大胸筋上部を鍛えられないという結論になります。
インクラインプッシュアップの角度で変わる刺激の範囲
インクラインプッシュアップでは上記のように台の高さによって運動強度が変わりますが、それだけではなく、体の角度によって刺激できる大胸筋の範囲が変わります。
角度が浅い場合
普通の腕立て伏せでもインクラインプッシュアップでも、体を真っすぐに一直線に保持して運動します。
手をつくベンチや椅子などの台の高さを低くして体の角度を浅くするほど大胸筋中部に対する刺激率が高くなりますし、下部に対する刺激率が低くなります。
角度が急である場合
反対に体の角度が急になるほど大胸筋の下部に対する刺激率が高くなります。
インクラインプッシュアップでは台を使って手をつく位置を高くするのは上部・中部・下部に分かれている大胸筋を鍛え分けるためではありません。
負荷を軽くすることで筋力が弱い人でもやりやすいように考えられた方法ですが、結果的に体の角度を変えることで、刺激する大胸筋の部位が変わります。
インクラインプッシュアップでの肘の使い方
普通の腕立て伏せでもインクラインプッシュアップでも、肘の開き具合で負荷がかかる筋肉部位が違ってきます。
インクラインプッシュアップでの肘の使い方について解説します。
肘を開くことで大胸筋に対する負荷が大きくなる
肘を開くことで大胸筋の稼働率が高くなります。
大胸筋を主に鍛えるのであれば、肘を開くようにしましょう。しかし、両腕の肘から肘までが一直線になるほど肘を開いてしまうと肩を痛めやすくなりますし、大胸筋に対する刺激も逃げてしまいます。体側から60度ぐらい肘を開くのが丁度いいです。
肘を体側につけることで上腕三頭筋にかかる負荷が強くなる
肘を体側につけて脇を締めた態勢でインクラインプッシュアップを行なうと上腕三頭筋への刺激が強くなるとともに、大胸筋の稼働率が下がります。
二の腕のたるみを引き締めるのが主な目的であれば、肘を開かずに体側につけて運動するようにしましょう。
肘を伸ばし切ると大胸筋の緊張が抜ける
肘を伸ばし切らずに少し余裕を残すぐらいにした方が大胸筋や上腕三頭筋の緊張が持続して効かしやすいです。
肘を伸ばし切ってしまうと肘がロックアウトされるので大胸筋などの筋肉の緊張が抜けてしまいます。
しかし一方で、肘の伸ばし方が足りないと可動域が狭くなってしまいますので、筋肉の緊張が抜けない範囲で肘を伸ばすようにしましょう。
インクラインプッシュアップとプッシュアップバー
腕立て伏せをより効果的するための筋トレ器具としてプッシュアップバーがあります。
このプッシュアップバーをインクラインプッシュアップに使うとどうなるかについて検証します。
安定性の問題
インクラインプッシュアップは高さがある台に手をつくことで行ないます。これらの台として使うのがフラットベンチだったり椅子だったりするわけですが、フラットベンチにしても椅子にしても、寝たり座ったりしやすいようにクッションが入っています。
これらのクッションはベンチや椅子が使いやすいように入っていますが、弾力性があるため、その上にプッシュアップバーを置くと安定性に欠ける問題があります。
プッシュアップバーは硬い床に置くことを前提にして作られていますから、硬くないクッションがあるフラットベンチや椅子の上に置くとぐらついたり、滑ったりして危険ですらあります。
高さの問題
さらに高さの問題もあります。インクラインプッシュアップでは高さが高くなるほど負荷が軽くなります。
プッシュアップバーは高さが20センチほどありますから、フラットベンチや椅子の上に置くと、全体の高さがさらに高くなることでインクラインプッシュアップとしての負荷が軽くなってしまいます。
結論
プッシュアップバーは床に手をついた際の手首の負担を軽減したり、大胸筋の可動域を広くしてストレッチさせるなどのメリットがあるわけですが、フラットベンチや椅子に手をついて行なうインクラインプッシュアップではそのメリットがあまり活きてきません。
プッシュアップバーを使うには置く場所が滑らない床であることが必要です。その条件があって初めてプッシュアップバーのメリットが活きてくるので、インクラインプッシュアップにはあまり向いていないと言えるでしょう。
デクラインプッシュアップ
インクラインプッシュアップの逆バージョンとでも言うべき種目がデクラインプッシュアップです。インクラインプッシュアップとの違いを含めてご説明したいと思います。
支点の違い
インクラインプッシュアップではフラットベンチなどの台に手をついて体を支えるので、支点となる足の方が下に位置することになります。
これに対して、デクラインプッシュアップでは、支点となる足の方を台の上に乗せます。
負荷の違い
インクラインプッシュアップとデクラインプッシュアップの負荷を比べると、デクラインプッシュアップの方がかなり負荷が重いです。
負荷が重いことは強度の強さに直結します。インクラインプッシュアップは台の上に手をつくことで普通の腕立て伏せよりも負荷を下げています。
これに対してデクラインプッシュアップは支点になる足の位置を上げることで普通の腕立て伏せよりも負荷を高めていますから、インクラインプッシュアップよりも2段階負荷が重いことになります。
刺激する部分の違い
インクラインプッシュアップでは上部、中部、下部に分かれている大胸筋の下部の部分に主に負荷がかかるのに対して、デクラインプッシュアップでは大胸筋の中部から上部にかけてに負荷が移ります。
インクラインプッシュアップで大胸筋の下部を刺激して、デクラインプッシュアップで中部から上部を刺激する方法もありますが、デクラインプッシュアップの方がかかる負荷がかなり大きいため、同じような回数をこなせないでしょう。
プッシュアップバーとの関係
前記のようにプッシュアップバーはインクラインプッシュアップにはあまり向いていないと申し上げましたが、デクラインプッシュアップでは床にプッシュアップバーを置くことができるので、安定性の問題もなく、また、大胸筋や上腕三頭筋の可動域を広げるメリットにもなります。
デクラインプッシュアップと高さの関係
デクラインプッシュアップでは足の位置を高くすることで負荷を重くして強度を高めています。足の位置が高いほど負荷が高くなります。
手を置く位置の高さが高くなるほど負荷が軽くなるインクラインプッシュアップとは対照的です。
ニーリングプッシュアップとの違い
腕立て伏せのやり方のひとつに膝を支点にして行なう二ーニングプッシュアップがあります。普通の腕立て伏せでは回数をこなせない人におすすめな点ではインクラインプッシュアップと共通していますが、フォームな刺激する部分などに違いがあります。
手をつく場所の違い
インクラインプッシュアップでは手をつくのはフラットベンチや椅子、机といった台の上になりますが、二ーニングプッシュアップでは普通の腕立て伏せと同様に床に手をついて体を支えます。
刺激する部分の違い
インクラインプッシュアップでは大胸筋の下部を主に刺激するのに対して、二ーニングプッシュアップでは大胸筋の中部に主に刺激を与えることになります。
刺激する範囲が普通の腕立て伏せとほぼ同じになります。
支点の違い
二ーニングプッシュアップでは膝を支点として体を支えるので、その分、普通の腕立て伏せよりも負荷が軽くなります。
筋力が弱い人が始めるのにやりやすい方法です。
強度調節の違い
インクラインプッシュアップであれば手をつく台の高さを調節することで運動強度を調節することができますが、二ーリングプッシュアップでは床に手をつくために、そのような強度調節がやりにくいです。
可動範囲を狭くすることで強度を下げることもできますが、それでは鍛えるべき筋肉のストレッチが足りなくて、効果もありません。
インクラインプッシュアップで鍛えられる部位
インクラインプッシュアップで鍛えられる部位について解説します。
大胸筋を鍛えてバストアップ
インクラインプッシュアップで最も効果的に鍛えられるのが大胸筋です。
インクラインプッシュアップで最も鍛えられる筋肉部位が大胸筋であることは女性にとってはバストアップ効果が高いことを意味しています。
バストアップを狙うには大胸筋の下部だけでなく中部にかけても鍛えるべきですから、台の高さが低いほど効果的です。
上腕三頭筋
大胸筋の下部に次いでインクラインプッシュアップで鍛えられるのが上腕三頭筋です。
肘の開き方によって上腕三頭筋にかかる負荷の比率が変わります。
肘を開くと上腕三頭筋の関与率が下がって、大胸筋下部の発動率が上がります。逆に、脇を締めて運動すると上腕三頭筋の発動率が高くなります。
肩の前面
上記の大胸筋の場合と同様に、手をつく台の角度によって肩の前面に対する刺激の強さが違います。
台の高さが低いほど肩前面に対する刺激が強くなるのに対して、台の高さが高くなるほど、肩の前面に対する刺激は弱くなります。
腹筋
インクラインプッシュアップで腹筋もある程度は鍛えられます。
運動中に体を一直線に保つためには腹筋を緊張させておかなくてはならないので、自然と腹筋も鍛えられます。
しかし、直接的な腹筋運動ほどに強く刺激するわけではありません。
まとめ
インクラインプッシュアップはフラットベンチや椅子や机などの台に手をつくことで、普通の腕立て伏せよりも負荷を軽くして、筋力が弱い人でもやりやすい腕立て伏せの方法です。普通の腕立て伏せは一見、簡単な運動のように見えても、案外ハードルが高かったりします。
男性でも筋力が弱かったり、筋力の割に体重が重かったりすれば意外に腕立て伏せで回数をこなせません。腕立て伏せはある程度は回数がこなせないと効果がありませんから、そういう人たちは床に手をついて腕立て伏せを始めるよりも台を活用することで負荷を軽くする方が始めやすくなります。
インクラインプッシュアップで回数がこなせるようになれば台の高さを低くして、さらに台をなくして、普通の腕立て伏せができるようになるでしょう。
インクラインプッシュアップで使う椅子などの台が頑丈さと安定性があるかを確認してから行なうようにしましょう。