現役スポーツトレーナーが教えたい!腰痛の原因と正しい筋トレ方法
筋トレをしていて体を痛める方は少なくありません。特に腰痛を起こす場合が多く、大抵は間違った方法が原因で起こります。
ここでは現役でスポーツトレーナーをしている筆者が、腰痛の原因や種類、正しい筋トレとストレッチの方法をお伝えします。
特に体の中でも大きな筋肉である、腹筋・背筋・大腿四頭筋(太もも)の筋トレと、腰痛に直接関係のある腸腰筋のストレッチを詳しく解説します。
1.腰痛にならない筋トレの方法
間違った筋トレは腰痛になるリスクが非常に高く、痛みが慢性化する原因にもなります。 まずは正しい筋トレの方法からお教えしたいと思います。
腹筋(上体起こし)
腰痛持ちの方が「腹筋を鍛えると腰痛が改善する」と聞き筋トレを始めた結果、腰痛が悪化したという話しをよく聞きます。
手軽で有名な運動だからこそ、正しい方法を知ろうとしない方が多いのもその理由です。
お伝えするのは、ポイントさえ押さえれば簡単で安全にできる方法なので、気軽にやってみてください。
- まず仰向けに寝て膝を90度曲げます。
- 頭の後ろに手を置き、息を吐きながらおへそをのぞき込む程度に上体を起こします。
- 息を吐ききったところでゆっくりと頭を下ろします。
- これを繰り返します。
ポイントはあまり上体を起こしすぎないことと、膝を90度曲げることです。
勘違いされる方が多いのですが、実は起き上がるほど上半身を持ち上げる必要はありません。下半身を上げた状態で止める運動を思い出して下さい。上げる高さが低いほど腹筋に掛かる負荷は強くなりますよね。これと同じ事が上半身を上げる腹筋運動でも起こっているのです。
腹筋をするとき腰が一瞬浮く感覚がある場合、腰にかなりの負担が掛かっています。この方法では腰が浮きにくいので腰痛を防ぐことにも繋がり、腹筋には十分な負荷が掛かるので効果も期待できます。
そして膝を曲げる理由ですが、試しに膝を真っ直ぐにし足を伸ばして腹筋をすると、直ぐに腰が浮いてくるのが分かると思います。次に膝を90度曲げて行うと、腰が浮きにくくなるのが分かると思います。これは膝を曲げることにより骨盤が後傾し、腰椎部の過度な湾曲を防ぐ働きがあり、腰痛予防にも繋がります。
背筋(上体反らし)
うつ伏せに寝て行う背筋運動は、腰にかなりの負担が掛かります。気をつけて行わないと翌日から腰痛持ちになってしまう可能性すらあるので、あまりおすすめはできません。
ここで紹介する方法は立って行う背筋運動で、タオルを一枚だけ使って行う誰でもできる簡単な方法です。
- まず肩幅ほどに足を広げて立ち、少し膝を曲げます。
- 両手でタオルの両端を持ち、左右に引っ張る形で頭上に挙げます。
- そこから頭の後ろを通るように首の高さほどまで下ろします。
- これを繰り返します。
ポイントは膝を曲げることです。膝を曲げなくてもできそうに思えますが、やってもらえれば分かる通り窮屈な感じになります。またなるべく顔を上げ前を向いて行うようにしてください。
この運動は胸を前に出す形になるので、見た目のバストアップや猫背防止にも繋がり、スタイルを気にする女性にはおすすめの運動です。
大腿四頭筋(スクワット)
最後は大腿四頭筋が鍛えられるスクワットの方法です。実はこの方法、背筋運動でお伝えした姿勢とほぼ同じです。
- 肩幅ほどに足を広げ立ちます。
- 頭の後ろに手を置き、肩を広げるようにして胸を張ります。
- その姿勢のままお尻を後ろに突き出すようにしながら、膝を曲げていきます。
- 膝が90度ほど曲がったところで3秒ほど停止し、息を吐きながら膝を伸ばします。
- これを繰り返します。
ポイントは膝を曲げるとき、つま先より前に膝が出ないようにすることです。お尻を後ろに突き出すのを意識すれば自然とできると思います。手は頭の後ろではなく、タオルを持った状態で行っても構いません。
膝が前に出すぎたり、過度に腰を反ると腰痛の原因になるので注意してください。
2.筋トレ以外で腰痛を起こす疾患
「筋トレをしたら腰が痛くなった」と言われる方でも、調べていくと筋トレ以外に原因があることもよくあります。
また腰に負担を掛けた覚えがない場合や、理由は分からないけど腰痛が慢性化している場合、外科的疾患や内科的疾患が考えられます。
外科的疾患
筋肉や靱帯、骨などの体の運動機能と関係する組織の損傷によって起こります。
筋トレによって起こる腰痛も、広義にはこちらに含まれます。
- 急性腰痛症(ぎっくり腰)
- 腰部の筋肉や靱帯など組織の損傷によるもの。立ち上がりなどで急に激痛が走る場合が多い。
- 腰部脊柱管狭窄症
- 神経の束が通る脊柱管が狭くなり、神経を圧迫して痛みが出る。
- 腰椎すべり症
- 腰椎が前方に滑ることで中を通る神経の束が圧迫されて痛みが出る。先天性疾患もある。
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰椎と腰椎の間でクッションの役目をする椎間板がはみ出し、脊柱管に滑り込むことにより中を通る神経の束を圧迫して起こる。
筋トレによる組織の損傷は、軽微なものが積み重なってなる場合や、高負荷によるものが考えられます。若年性で慢性化している腰痛の場合、腰部脊柱管狭窄症と診断される場合が多いです。
これら疾患は整形外科でレントゲンを撮って確定されることが多いです。気になる方は最寄りの整形外科にて診察を受けてください。
内科的疾患
腹部にある内臓に痛みが起こった場合、それを腰痛だと勘違いする場合があります。
胃、胆嚢、腸、腎臓は腹部にある内臓なので、これらの疾患を持っている方は要注意です。特に胃潰瘍や十二指腸潰瘍、腎臓の結石は背部の痛みとして認識することが多く、腰痛だと思って放っておくと悪化する可能性があるので注意が必要です。
これら疾患は内科での血液検査や胃カメラなどで分かります。結石はエコーやレントゲンで見つかることもあります。
3.日常的にストレッチをしよう
筋トレは好きでも、ストレッチは面倒くさくて適当になってしまう方も多いです。しかしスポーツ選手が念入りにストレッチをするように、筋トレをする前後でのストレッチはかなり重要になってきます。
体は基本的に怠けるのが大好きで、何もしなければ筋肉は落ち伸縮性は低下します。その状態から急に負荷を掛けると、筋肉は耐えきれずに断裂を起こし、酷いときは肉離れや靱帯断裂で手術なんてこともあり得ます。
最も良いのは日常的にストレッチをすることです。今回はその中でも腰痛に関係する腸腰筋のストレッチをお伝えします。
腸腰筋(腸骨筋+大腰筋)のストレッチと理論
腸腰筋とは骨盤部両側に一対ずつある腸骨筋と大腰筋、小腰筋からなる筋肉の総称です。その中で小腰筋はなくなりつつある筋肉で、進化の過程で必要性が失われ、現代人の中には小腰筋が存在しない人もいます。ここでは腸腰筋の中でも重要な、腸骨筋と大腰筋の二つに焦点を当ててお伝えします。
腸骨筋と大腰筋のストレッチは一つの方法で同時に行えます。
- まずは膝立ちになります。
- 伸ばしたい方と反対の足を前に出し、足の裏を地面につけた状態になります。
- 次に両手を頭の上方で組みます。
- そこから前に出した膝を前方に突き出すように曲げ、同時に両腕を後上方に引っ張る感覚で反ります。
- 股関節の前方が伸ばされている感覚のまま10秒ほど停止します。
- これを5回ほど繰り返します。
ポイントは息を吐きながら伸ばすことです。
息を吐く行為は副交感神経が優位になるので、筋肉が弛緩しやすくストレッチ効果を上げてくれます。
膝を地面に着くと痛い方は、伸ばす方の脚をベットの上に乗せて行っても同様のことができます。腕は挙げなくても出来ますが、挙げた方がよりストレッチ効果が高くなります。
ストレッチを解剖学的視点と運動学的視点から解説
ここからはストレッチを解剖学的視点と運動学的視点から解説します。重要なことですが少し難しいかもしれませんので、適当に流してもらっても結構です。
腸骨筋は骨盤の前方に付着し、そこから太ももの上端内側まで伸びています。筋肉が収縮すると骨盤が起点となり太ももが前に上がります。
次に大腰筋ですが、各腰椎の前内側に付着し、陽骨筋と同じで太ももの上端内側まで伸びています。筋肉が収縮すると腰椎が起点となり太ももが前に上がります。陽骨筋と比べると大腰筋の方が長くて上方に付着しています。
腹筋運動でお伝えした内容と関係があるのですが、仰向けで膝を90度曲げると自然と股関節も45度ほど曲がります。すると腰が自然と浮きにくくなります。これは膝を曲げることで、骨盤から太ももの内側に付いている腸骨筋が近づいて緩み、骨盤を前方に引っ張っていた力がなくなり、骨盤が後傾することで起こります。
そしてもう一つは大腰筋も同じ理由で緩み腰椎を前方に引っ張っていた力がなくなることで、前湾が緩やかになり後方に落ち込みます。
人が股関節を曲げているのは座っているときぐらいです。仰向けやうつ伏せで寝ているときと立っているとき、股関節は真っ直ぐになっています。腸腰筋は股関節が曲げられない状態だと、代わりに腸骨と腰椎を前方に引っ張ります。
もし腸骨筋と大腰筋が硬くなり柔軟性が落ちてしまうとどうなるでしょうか。真っ直ぐ立つと骨盤が前傾し腰椎の前湾が強くなることで、腰が全体的に前に出て行きます。見た目にはアヒルのようにお尻が後方へ突き出している感じですね。この状態が腰に負担を掛けることになります。
横向きに寝た方が腰に良いと言われる理由はこれですね。股関節を曲げることができるので、腸腰筋が引っ張られず腰に負担が掛からないのです。
この理屈を知っていれば、日常的に応用できる場面は多くなると思いますので、是非覚えておいてください。
4.筋トレを続けるにために
ここまでお伝えした筋トレの方法とストレッチを行えば、腰痛になりにくく体幹の強い体が作れます。
筋トレを続けると怪我はつきものですが、筋トレを続けて一生丈夫な体でいるためにも、知っていて損はないはずです。
腰痛持ちの方もそうじゃない方も、これから筋トレを始める方は参考にして頂ければと思います。