総指伸筋の作用と筋肉の特徴【筋トレやストレッチ方法、怪我の対処法も解説】
「総指伸筋(そうししんきん)英語名:extensor digitorum muscle」は前腕の外側にあり、肘から手首まで伸びる筋肉群です。人差し指・中指・薬指・小指の4本の指につながり、腱を通じて指を伸展させる構造をもっています。
親指を除いた指の伸展に関係し、握力・指の力に大きく影響を与える筋肉ですので、人間の運動の中でも活躍頻度が高く鍛えておきたい筋肉の一つです。
ここでは総指伸筋の役割・作用と、その筋トレの方法をまとめています。
総指伸筋の場所はどこ?
「総指伸筋」は、字のごとく指を伸ばすために使われる筋肉です。
多くの筋肉群の伸筋群と同様に、体の表面側にあります。
ぐっと指を握り込むと前腕に筋が現れるのが総指伸筋で、目で確認することも容易です。
肘から上腕へ伸び、手首の部分絞られた状態になり、手のひらに扇状に広がる「総指伸筋腱」と合流しています。
総指伸筋ってどんな役割をしている?
親指にだけつながっておらず、人差し指・中指・薬指・小指の4本の指につながり運動を司ります。
人が行う毎日の行動のあらゆる場面で総指伸筋は活動しますので、軽く物を掴む動作や重い物を持ち上げる・握ったまま固定するといった動作に使われます。
総指伸筋は「伸筋」ですが、指を折り曲げて物を掴む際にも活動し、浅指屈筋・深指屈筋と連動して補助をするため握力の強弱にも影響を与えるのです。
具体的な動作と総指伸筋の関係
総指伸筋は、人がさかんに使う手に繋がりますからあらゆる動作時に活躍します。
- 手のひらをパーの状態に開く(反らす)
- ピアノやギターなど楽器を弾く
- パソコンを操作する
- 親指と連動させて物をつまむ
- 指を曲げたまま引っ掛けて固定する
- 物を投げる
- 平手で物を叩く
日常生活・スポーツと非常に活動の幅が広いのが「総指伸筋」の特徴です。
握力にも影響する総指伸筋
「握力」は指を握り込んだ際の力の強さのことですが、反対の動きであるはずの総指伸筋も、握力の強さに影響を及ぼします。
これは物を持ち上げる際には背筋をメインに使いますが、腹筋の強さも影響するのと同様のことです。
筋肉は連動して助け合っているので、「前腕屈伸筋肉群」と総指伸筋を含めた「前腕伸筋群」の両方を鍛えることが重要なのです。
筋トレで総指伸筋を鍛える方法
手先をよく使う仕事をされている人ならば、特別なトレーニングをしていなくても大きく成長し、筋肉質でたくましい状態になりますが、ピンポイントで鍛えることも可能です。
他の筋肉と同様に運動回数や負荷によって鍛えられ、「指」「手」「手首」「腕」を動かすトレーニングが有効です。
リバースリストカール
リバースリストカールは、ダンベルなどで行なえ、トレーニングチューブでも代用することができます。
- イスに座った状態で手首(内側)を膝に固定し、ダンベルを握る
- そのまま腕を反らせてダンベルを持ち上げる
- 限界まで反らせたらダンベルの重さで降ろし繰り返す
フィンガーバンド
総指伸筋をダイレクトにトレーニングするには「フィンガーバンド」が効果的です。
フィンガーバンドとは、幅の広い輪ゴムのような形状をしていて、握力を鍛えるためのグリッパーとは反対の動きで総指伸筋を集中的にトレーニングすることができます。
- フィンガーバンドに5本すべての指を通す
- 5本指すべてを開いてゴムを引き伸ばすようにする
- そのままの状態を数秒間維持する
- 元に戻して繰り返す
グー・パー運動
器具がない場合には手のひらを「グー・パー」とスピーディーに繰り返すだけでも総指伸筋を鍛えることができます。
- 腕を前に出してグー・パーをすばやく繰り返す
- 腕を頭上に上げてグー・パーをすばやく繰り返す
- 腕を左右に水平に開いてグー・パーを繰り返す
とくに1と2は日常の動作ではあまりしない動きですので、筋肉痛になりやすいはずです。少しづつ負荷と回数を増やすようにし、無理をしないよう注意しましょう。
総指伸筋はストレッチも大切
総指伸筋は手首の柔らかさなど、運動パフォーマンスにも関係しますので「ストレッチ」をすることも大切です。
使い過ぎたり疲れてくると意外に固く硬化しやすい筋肉群ですので、気がついたときにほぐしてやるとよいでしょう。
反対側の手で引っ張るストレッチ
総指伸筋のもっとも簡単なストレッチは、反対側の手で引っ張る方法です。
- 手にひらを下に向けて片腕を前に出す
- 反対側の手で手のひらを押さえ下に曲げる
- そのまま胸側に向けてゆっくりと引っ張る
- 数回繰り返し逆の手も同様にする
壁ストレッチ
壁を使って両腕の総指伸筋を同時にストレッチする方法です。
- 壁に向かって立つ
- 手のひらを下にして腕を前に出し手首を下に折り曲げる
- そのまま壁に折り曲げた手の甲の部分を当てる
- 体をゆっくり壁に向かって倒しストレッチする
手首の回転運動
細かな筋肉が集まる手首付近では、各筋肉が連動し硬直していることもあります。
「手首の回転運動」なら、前腕・手首付近にあるたくさんの筋肉を同時にストレッチすることができます。
- 手の指を交差させて組む
- 手首を折り曲げて回転させるようにほぐす
- 右回り・左回りの両方を行う
総指伸筋のストレッチは上半身だけで完結しますので、どこでも簡単に行えます。重い物を持った後や細かな作業を続けた後などに軽く行い、筋肉の硬化を予防しましょう。
総指伸筋は傷みやすい筋肉
総指伸筋は非常に傷みやすく故障しやすい筋肉です。
スポーツや筋トレなど負荷の多い動きをしなくても、仕事での軽作業やパソコン・文字をペンで書くといった、負荷のかかりにくい動作を続けることでも傷んでしまうこともあるのです。
筋肉痛とは違う病的な痛みが発症することも多く、癖になって動きに支障が現れることも少なくありません。
また、睡眠時や日頃の動きの癖で、知らず知らずのうちに総指伸筋に力が入り傷んでしまうこともあります。
総指伸筋の傷みから、腱鞘炎などのさらに重度な障害に進行することもあるので注意が必要です。
総指伸筋が傷んでしまったときのために、適切な対処法を覚えておきましょう。
リストバンド
出典:amazon
総指伸筋が傷むと筋肉が硬直して血流が悪くなることでさらに悪化したり、治りが遅くなることがあります。これを防ぐためには、保温性のある「リストバンド」を付けると改善することがあります。
手首は皮膚が薄く体温が逃げやすいので、この部分を保温するだけで血流の上昇効果はかなり高いものです。
テーピング
出典:amazon
総指伸筋の故障は使いすぎによるものがほとんどですから、仕事で傷んだ場合などはなかなか休ませることができません。
こんなときには「テーピング」で手首を固定し、総指伸筋の動きに制限をかけることで休息させることができます。
前述のリストバンドで改善できないような、強い痛みを感じるときにテーピングは有効です。
入浴などでお湯につける
腕や手のひらにはたくさんの筋肉や腱が集合しているため、故障の原因も複雑になります。また腕から手にかけては「筋肉の緊張」が傷める原因になるので、リラックスさせてほぐしてやることも大切なのです。
最近ではシャワーだけで済ませてしまう人も多いようですが、湯船に浸かると細かな筋肉群の緊張が取れ、受けたダメージをリカバリーをすることができます。
湯船に浸かることができない環境ならば、洗面器やバケツにお湯をはり、手と腕を浸けて温めます。このとき、同時に優しくもみほぐすようにマッサージをすると、さらに改善効果は高まります。
総指伸筋が傷んだら「休ませること」が基本になることを覚えてきましょう。
日常で最も使っている筋肉ですので、活動量の多い人は危険です。
場合によっては外科手術が必要となることもあるので、あまりに症状がひどい場合には整形外科などの専門医を受診することをおすすめします。
まとめ
「総指伸筋」は仕事やスポーツ・日常生活の中のありとあらゆる動きに使われる筋肉です。小さな筋肉群とも連動しているので、鍛える場合もケアする場合も周囲の筋肉も同時に意識することが大切です。