内転筋マシンの効果と正しい使い方【使う順番にも注意しよう】
脚は大腿四頭筋を始めとして、多数の筋肉で構成されていますが、少なからぬトレーニーに見過ごされがちなのが「内転筋」です。その内転筋を専門に鍛えるために開発されたのが内転筋マシンです。
内転筋は脚を内側に引き寄せたり、股を閉じるという重要な役割がある割に本格的に鍛えているトレーニーは意外に少ないです。
多くのトレーニーは大腿四頭筋を中心に鍛えて、その他にはハムストリングを鍛えるというパターンが多いです。それでもかなり大腿部が鍛えられますが、本格的に内転筋を鍛えるには内転筋マシンを使うのが効果的です。
内転筋マシンの効果、正しい使用法を解説します。
内転筋の働き
内転筋マシンをご紹介する前に、内転筋の役割と働きをご紹介します。内転筋の動きを理解しておくと、内転筋の正しい活用方法がわかりやすいでしょう。
大腿部の内側を構成する5つの筋肉群
大腿部の内側には5つの種類の筋肉が組み合わさって、内転筋の筋肉群を構成しています。恥骨筋、大内転筋、長内転筋、短内転筋、薄筋の5つです。
以下、これらの個々の筋肉の役割を確認しておきましょう。
恥骨筋の役割
恥骨筋は5つの内転筋群の中で最も上部に位置する筋肉です。
恥骨付近に位置していて、平べったい形状です。股を閉じるなど、太ももを内側に振る役割があります。
大内転筋の役割
大内転筋は5つの内転筋群の中で最も大きな筋肉です。
大きいだけあって、内転筋の中でも最大の筋力を発揮します。大腿四頭筋、大腿二頭筋と並んで、大腿部を代表する筋肉です。
長内転筋の役割
長内転筋は大内転筋の前に位置していて、恥骨筋の下部を走っています。
股関節を閉じる動作だけでなく、股関節を曲げたり、伸ばしたりの動作でも活躍します。
短内転筋の役割
短内転筋は恥骨筋と長内転筋に覆われている筋肉です。それらの筋肉に覆われて深い位置にあり、股関節を内側にひねる役割があります。
薄筋
薄筋は大腿部の内側を通っている細長い筋肉です。5つある内転筋群の中で唯一の二関節筋です。
内転筋マシンの効果
内転筋は大腿部正面の大腿四頭筋や裏側のハムストリングほど熱心に鍛えられていない傾向がありますが、その役割は非常に重要です。
内転筋マシンで鍛えると次のような効果があります。
内転筋群が強化される
内転筋マシンの第1の効果は内転筋群が強化されることです。
見た目の問題以上に内転筋が強化されることが重要です。特に内転筋が弱くなっていることで股関節関連の問題が出ている人にはリハビリとしての効果もあります。
サイドステップの強化
多くのスポーツではサイドステップのスピードが必要です。前後の動きがいくら速くても、左右の動きが悪ければスポーツ競技では困ることが多いです。
野球の試合で盗塁するシーンを見たことがあると思いますが、あのような動きは内転筋が弱いと瞬間的な力を出せません。
学校の体力測定で反復横跳びの回数を計測したのを覚えている人も多いと思われますが、反復横跳びで好記録を出せる人は内転筋の強さや柔軟性が優れている人です。
内転筋の柔軟性が向上する
内転筋は硬くなりやすい筋肉群です。普段からストレッチも何もしていないようだと、知らず知らずのうちに硬くなってしまいます。
内転筋マシンで鍛えることで柔軟性をある程度向上させることができます。
正面から見た大腿部に厚みがつく
見た目としては内転筋が発達すると正面から見た大腿部の厚みが増し、立体的で迫力のある大腿部になります。
大腿四頭筋がよく発達していても大腿部の内側がスカスカな感じでは迫力という点では物足りないです。
内転筋マシンで鍛えると大腿部の内側が発達して、完成度が高い脚になります。
内転筋マシンの正しい使い方
内転筋マシンの正しい使い方のポイントをご紹介します。内転筋マシンは優れた筋トレ器具ですが、使い方を間違えると効果半減です。
股関節の柔軟性の確認
内転筋マシンを使用する際には、股関節がどれぐらいの柔軟性なのかを確認しておきましょう。
特に運動経験が少ない人や初心者の場合、自分の筋肉の状態がわからないことが多いですから、股関節の柔軟性を確認するようにしましょう。
股関節の柔軟度に合わせて角度を調節する
内転筋マシンでは股関節の柔軟性に合わせて脚をかけるパッド部分の角度を調節できます。
角度調節をする際には、余裕のある角度に設定しましょう。無理に股関節をストレッチさせるような角度にしてしまうと股関節を痛める可能性があります。
もともと股関節の柔軟性が高い人や、内転筋のトレーニングの経験を積んで体が慣れている人であれば、内転筋をストレッチさせる角度にしても大丈夫でしょう。
適性な重量設定にする
内転筋マシンでは過大な重量は必要ありません。
女性の場合は無理に重い重量を扱おうとする人は比較的少ないですが、男性ほど無理な重量を追いかけがちです。10回ぐらいを正確なフォームでできる重量に設定しましょう。
重量にこだわるのは筋トレで重要なことですが、フォームが正しいことが前提になります。
脚を完全に閉じるようにする
膝を完全に閉じるようにしましょう。内転筋マシンで完全に閉じられていない理由としては、動作が雑な場合と、重量が重過ぎる場合が考えられます。
内転筋で股を閉じるという動作は大腿四頭筋やハムストリングなどに比べて力が入りにくい傾向がありますから、丁寧に運動するようにしましょう。
動画:内ももをアダクションで引き締める
内転筋マシンを使う順番
脚を鍛える筋トレメニューの中で内転筋マシンをどのタイミングに入れるかを考える必要があります。
間違ったタイミングで入れてしまうと、脚のトレーニング全体に影響します。
大腿四頭筋の後に入れる
脚の筋肉は大きく分けて、大腿四頭筋、内転筋、ハムストリングに分かれています。この中で脚のトレーニングは大腿四頭筋から始めるべきです。大腿四頭筋を鍛える種目が最もエネルギーを必要としているからです。その最たるものがスクワットです。
スクワットやレッグプレス、ハックマシン、といった種目はエネルギーの消費量も強度も高いですから、体が元気なうちに行なわないといけません。
内転筋から鍛えるとしたら、脚全体のトレーニングの効率が悪くなってしまいます。内転筋マシンを使う順番は必ず大腿四頭筋を鍛えた後にしてください。
ハムストリングとの関係
内転筋マシンは大腿四頭筋を鍛えた後に行なうとして、ハムストリングとの関係ではどうでしょう。
ハムストリングを鍛える種目としてはレッグカールマシンが代表的です。レッグカールマシン以外にもスティッフレッグデットリフトもあります。
スティッフレッグデットリフトまで行なっている人はかなり本格的なトレーニーですが、内転筋マシンを行なうタイミングとしてはハムストリングの前でも後でもかまいません。
まとめ
大腿部の筋肉は上記のように、大きく分けて大腿四頭筋、内転筋、ハムストリングがあります。これらの筋群の中で、多くのトレーニーが見落としがちなのが内転筋です。その役割の重要度の割に内転筋を本格的に鍛えているトレーニーは意外なほど少ないです。しかし、内転筋の鍛え方が足りないと、ケガの原因にもなります。
大腿四頭筋やハムストリングが強い割に内転筋が弱いと、筋力バランスが悪くなってケカしやすくもなります。その意味で、内転筋もハムストリングなどと同様にしっかりと鍛えるべきです。実際、大腿部を構成する筋肉群の中で最もケガしやすいのが内転筋です。筋トレで痛める場合だけでなく、多くのスポーツ競技でも内転筋は痛める確率が高いです。
内転筋を痛める傾向が高いのは、股関節が硬くなりやすいことも関係しています。日頃から運動する習慣がなかったりすると、年齢と共に内転筋が硬くなります。それを防ぐためにも、内転筋マシンで鍛える意味があります。専門の競技と関係なく、少なくとも1種目は内転筋を鍛える種目を行なうようにしましょう。
内転筋は5つの筋肉で構成されている筋肉群ですから、それぞれバランス良く鍛える必要がありますが、内転筋マシンはひとつの運動で5つの筋肉を同時に鍛えてくれます。最初のうちは股関節の柔軟度に合わせて余裕を持った角度から始めるべきですが、慣れてきて、柔軟性が高くなってきたら、徐々に内転筋マシンの角度を開いてストレッチさせるようにするといいでしょう。
内転筋を鍛えるための筋トレ種目はスミスマシンを使ってのワイドスタンスのスクワットなど、いくつかありますが、技術的に初心者には難しいものもあります。
その点、内転筋マシンは初心者でも使いやすいです。動く軌道が決まっていることも、安全に使える大きなポイントです。