肩甲下筋の効果的な鍛え方!トレーニングの盲点を相反抑制で克服しよう
肩のインナーマッスルのトレーニングはよく知られていて、方法や注意点もしっかりと守れている方も多いように思います。しかし従来の方法には盲点があります。
従来のトレーニングではインナーマッスルも鍛えていますが、効率よく鍛えているとは限りません。今回はしっかりとインナーマッスルに焦点を当てた肩甲下筋のトレーニング方法を紹介します。
肩関節の解剖
人間は2つの肩関節を持っています。いわゆる肩関節というのは、正式名称で肩甲上腕関節と言います。体幹に付いている肩甲骨と腕の骨である上腕骨で構成されているためです。
関節の種類としては球関節と言い、関節の中でも自由自在に動かすことができる関節です。その他には肘関節や指などは曲げることと伸ばすことができませんし、骨盤の仙腸関節などはほとんど動かない関節です。
このように人間の関節には色々な関節があります。自由度の高い関節ということは安定性も低い関節でもあるということです。そのため、肩関節には力を発揮したり、安定させるといった様々な筋肉が付着されています。
肩関節の動き
自由度が高い肩関節ですが、動きにはそれぞれ名称があります。肩を前方向にバンザイする動きを屈曲、その反対に後ろに動かすことを伸展と言います。
横にあげながらバンザイする動きを外転、その反対の動きを内転と言います。大の字に肩をあげその状態から肩を水平に保ちながら前に動かすことを水平内転(または水平屈曲)、反対側に後ろに動かすことを水平外転(または水平伸展)と言います。
そして今回のポイントとなる動きですが、小さく前へならえをした状態で、手の甲側に開く動きを外旋、反対に手の平側に動かすことを内旋と言います。
肩甲下筋とは
肩甲下筋とは肩関節のインナーマッスル(他には小円筋、棘下筋、棘上筋があります)の1つです。
肩甲骨の前面から始まり、脇の下を通り肩関節の前面を覆うように付いています。
インナーマッスルとは内側にある筋肉で、これらのインナーマッスルの働きは肩関節を安定させる働きがあり、簡単にいうと肩を動かした時に脱臼しないように働きます。
肩甲下筋独自の働きとしては肩関節の内旋が主な働きになります(ほかにも働きはあります)。トレーニングにおいて、この筋肉の働きを考えながら行うことが重要になってきます。
肩甲下筋の定番トレーニング方法
インナートレーニングはマシンを使って体を大きく動かすというより小物を使って小さく動かすことが多いです。
肩のインナーマッスルのトレーニングというとチューブやダンベルを使うトレーニングが有名です。
肩甲下筋のトレーニングも同様です。
チューブを用いる場合、棒などに引っ掛けてチューブを握り、小さく前へならえの状態で内旋方向にひねります。
引っ掛ける場所は肘と同じ高さのいちに引っ掛けると良いでしょう。
肘を軸にできるだけ大きい範囲で動かし、できるだけ肘が動かないように肩を動かします。
ダンベルを用いる場合、鍛える側を下にして横向きになり、小さく前へならえをし、内旋方向に動かします。
負荷はあまり強すぎず、チューブであれば黄色、赤色、緑色のチューブ(弾力が弱いチューブであり、青、黒の順に強度が強くなっていく)、ダンベルであれば数キロで十分でしょう。
回数は数10回を目安に行うと良いでしょう。10回未満しかできない負荷は負荷が高すぎる可能性があります。
この他にも様々なトレーニングがありますが、今回はこのベーシックな2つのトレーニングを中心に話していきます。
肩甲下筋の定番トレーニングの注意点
注意点としては弱い負荷で回数を多めに行うようにすることが知られています。この理由としては負荷を強くしてしまうとアウターマッスル(この場合は大胸筋など)が優位に働いてしまうからです。
アウターマッスルとは外側にある筋肉で、大きな力を発揮する時に使われます。アウターマッスルが優位に働いてしまうとどうしていけないのでしょうか。
本来、肩関節に限らず関節を動かす時、インナーマッスルが関節を安定させながら、アウターマッスルが力を発揮して関節が動きます。
しかし、人間はアウターマッスルのほうが体表面から視認ができ、意識もしやすいので、インナーマッスルが働かないままアウターマッスルが働いている状態になってしまいがちです。
前述したようにインナーマッスルは関節の安定に関わりますので、アウターマッスルのみ働いた状態でトレーニングを行うと関節が必要以上に動いてしまい、靭帯やその他の組織に大きな負荷がかかってしまいます。これではインナーマッスルが鍛えられないことに加え、怪我のリスク等にもつながります。そのためアウターマッスルを抑制することがインナーマッスルの最も重要な要素の1つであり、トレーニングをされている方のほとんどが負荷の設定に最新の注意を払っているのではないでしょうか。
肩甲下筋トレーニングの盲点
上記の方法が定番のメニューになります。アウターマッスルが優位にならないような負荷設定が大事になります。
しかし、これだけではアウターマッスルを抑制できていない場合があります。
肩甲下筋の働きは肩関節の内旋です。トレーニングでも内旋の動きを行います。しかし、アウターマッスルである大胸筋の働きも肩関節の内旋なのです。
つまり、負荷を小さくしても内旋であることには変わりませんので、大胸筋も働いてしまい、抑制しきれていない場合があるということです。
また、少し細かいですが、肩関節には三角筋というもう1つのアウターマッスルがあり、この筋肉も肩関節の屈曲、そして内旋の働きを持っています。
その他にも肩関節の内旋に働くアウターマッスルは多く存在します。より集中的に肩甲下筋を鍛えるにはこれらのアウターマッスルを抑制する必要があります。
相反抑制
大胸筋や三角筋などを抑制するためには相反抑制を利用します。
相反抑制とは1つの筋肉が働いている時、反対の働きをする筋肉は抑制されるという生理現象です。
例えば、肘を曲げる上腕二頭筋が働いている時、肘を伸ばす上腕三頭筋は抑制されます。もし両方の筋肉が働いてしまうと肘が固まってしまいます。関節がスムーズに曲げ伸ばしができるようにこの相反抑制が起きるのです。
つまり、大胸筋や三角筋の働きと反対の動きをすればこれらのアウターマッスルを抑制できるということになります。
相反抑制を利用した工夫
それではどうすれば相反抑制を利用して大胸筋を抑制することができるのでしょうか。
大胸筋の働きは肩関節の内旋に加え、肩関節の屈曲の働きがあります(その他にも働きはあります)。三角筋も肩関節の屈曲と内旋の働きがあります。
つまり、トレーニングでは肩関節の屈曲の反対の伸展方向に力を入れながら内旋をすればアウターマッスルを抑制した状態でトレーニングができるということになります。
勿論、内旋の動きはしているので、完全に抑制しているわけではありませんが、肩関節を屈曲しながら内旋するよりはるかに筋肉の働きは抑制できます。
それではトレーニングの実際について説明していきます。
チューブを用いる場合、基本的な姿勢などは同じですが、1つ工夫を加えます。
壁を背にして、肘で壁を押したまま、前述したように肩関節の内旋を行います。
実際にトレーニングをしてみるとわかるのですが、肩関節の内旋をしようとすると肩関節が屈曲方向にいきやすくなってしまいます。これがアウターマッスルである大胸筋や三角筋が働こうとしている状態です。
アウターマッスルの方が意識しやすいですし、力も入れやすいので壁を押し続けることで伸展方向への力が抜けないようにするのが最大のポイントです。
ダンベルを用いる時も同様で、基本的には方法は変わらず壁を背にして壁を押しながら内旋方向へのトレーニングを行います。