プッシュアップバーの完全マニュアル【種類・選び方・効果・鍛え方】
ホームセンターなどでも手軽に買えるプッシュアップバーは、お手頃な値段で買えて、筋肉を効果的に鍛えられるおすすめの筋トレグッズです。
プッシュアップバーで効果的に鍛えられるのは大胸筋や上腕三頭筋といった、上半身の押し系の筋肉です。
普通の腕立て伏せを行なっても床が邪魔して可動域が狭く、どうしても効果が限定的ですが、プッシュアップバーを使えば、可動域を広くしてフィニッシュポジションでのストレッチがあることで効果が格段に違います。
プッシュアップバーの選び方、プッシュアップバーを使って効果的な筋肉の鍛え方を解説いたします。
プッシュアップバーの種類
市場にはかなりの種類のプッシュアップバーが出回っています。市場に出回っているプッシュアップバーには以下のような種類があります。
U字型プッシュアップバー
U字型のプッシュアップバーが最も普及しているタイプです。初めから組み上がっている固定式のものと、組み立て式のものがあります。
組み立てるのは簡単ですが、組み立て式は複数の部品で構成されているために、組み立ててみると部品がぐらつくものがあるので要注意です。
手で握るバーに角度がついているもの
U字型のプッシュアップバーは手で握るバーの部分が床と平行になっていますが、このバーの部分に角度がついていて、床に対して斜めになっているタイプのものもあります。
角度がついているので握りやすいとも言えますが、これが良いかどうかはかなりのところ好みの問題です。角度がついていることで、使いやすい面もありますが、汎用性には欠けます。
ディーププッシュアップバー
U字型のプッシュアップバーの多くは床からの高さが14センチから16センチですが、高さを調節できるディーププッシュアップバーならば最大で高さ26センチにまでできます。高さが高くなる分、可動域が広くなって運動強度が高くなります。
回転式プッシュアップバー
手で握るバーの部分が床に対してクルクル回転するタイプのプッシュアップバーです。回転することで運動中に最適な角度にしやすいメリットがあります。
プッシュアップバー選びの注意点
プッシュアップバーには様々なタイプがありますが、それらのタイプ以外のプッシュアップバー選びのポイントを見てみましょう。
1.材質に注意する
プッシュアップバーの材質は全部が樹脂製のもの、一部が樹脂でハンドル部分が金属製のパイプでできているもの、全部が金属製のものなどがあります。
全部が金属製のものが一番頑丈です。
ハンドル部分が樹脂製だと強度の面でやや不安があります。購入する時は耐荷重量がどれぐらいかにも注意しましょう。
2.値段
プッシュアップバーの値段は安いもので千円以下、高いもので6千円程度です。上記に挙げた各種のタイプの中で一番値段が高いのが回転式のプッシュアップバーです。
3.握り部分がスポンジだと劣化が早い
プッシュアップバーの握り部分がスポンジだと劣化が早いです。握り部分のパイプが樹脂製であれ、金属製であれ、その上をスポンジで巻いている構造だと、先にスポンジ部分が劣化して裂けてしまったりします。そうなると手で握るバーが剥き出しになってしまって滑りやすくなります。
すぐに握りのスポンジ部分がダメになるわけではありませんが、頻繁に使うとしたら1年ぐらいでスポンジ部分が劣化することが多いようです。長く使うことを考えたら手で握る部分の材質にも気をつけたいところです。
4.安定性があるものを選ぶこと
プッシュアップバーを選ぶときには安定性も要チェックです。動作中にぐらぐらするようなものは強度不足ですから避けましょう。
普通に使用している分には問題がなくても、負荷が強くなるような使い方をしたらぐらつくようでは不安です。安定性が弱いと運動中にプッシュアップバーが倒れてしまうこともあります。
プッシュアップバーの握り部分が床から離れるほどに不安定になる傾向があります。その意味ではディーププッシュアップバーを使用するときには注意が必要です。運動中にプッシュアップバーが倒れるようなことがあるとケガをする可能性がありますから、安定性がないものは避けましょう。
高さが高いものほど重心のかけ方が垂直でないと倒れる危険が高くなります。手幅が広かったりすると重心が斜めにかかるので高さが高いと倒れやすくなります。
5.滑らないこと
プッシュアップバーを使うときは滑りにくい床で使うようにすべきなのは当然ですが、床面が滑りやすくなくても、プッシュアップバー自体が滑りやすいものであれば滑ってしまう危険があります。床との接地面が少ないほど滑りやすくなります。
6.頑丈なものを選ぶこと
プッシュアップバーを選ぶ際にはできるだけ頑丈なものを選ぶのが安全です。
材質はできるだけ金属製がおすすめです。体重が重い人はなおさらです。
重量が軽い方が良いと思えるかもしれませんが、日常的に持ち運ぶようなものではありませんし、金属製で少々重いぐらいのものの方が頑丈です。
プッシュアップバーの効果
プッシュアップバーを使うことで次のような効果があります。
プッシュアップバーは普通の腕立て伏せとフォーム自体は同じですが、一般的な高さでも床から14センチから16センチ離れていることと、床に手をつくのではなく、バーを握ることで、普通の腕立て伏せよりも筋トレ効果がかなり高いです。
1.可動域が広くなる
筋肉を効果的に鍛えるためにはできるだけ可動域を広くする必要がありますが、普通の腕立て伏せだと、床に直接手をつく態勢になるので、可動域が十分ではありません。大胸筋がすぐに床についてしまいますので、大胸筋を鍛える上で可動域が足りません。可動域が足りないので十分なストレッチを大胸筋にかけることができません。
これがプッシュアップバーを使うことで、劇的に可動域を広くすることができます。プッシュアップバーを使うことで大胸筋の内側から外側にかけて広く刺激を与えることができ、形良く発達させることができます。普通の腕立て伏せでは刺激できないところまで十分に刺激できるのがプッシュアップバーです。
2.高い負荷を筋肉にかけられる
プッシュアップバーを使うことで可動域が広くなりますが、これは筋肉にかかる負荷も高くなることを意味しています。腕立て伏せで大胸筋を鍛えるために最も重要なのが大胸筋にストレッチがかかる一番下でのポジションです。このポジションでいかに負荷をかけられるかで大胸筋の発達が大きく違ってきます。
プッシュアップバーを使うことで、普通の腕立て伏せよりもかなり深いポジションまで上体を下げることができるため、大胸筋や上腕三頭筋をより効果的に鍛えられます。
3.手首に不自然な負担がかからない
プッシュアップバーを使うことで手首に不自然な負担がかからないのもプッシュアップバーの利点です。
普通の腕立て伏せの場合、床に直に手をつきますので、手首の角度が不自然な形になります。手幅を狭くしても広くしても不自然な形になるのを避けられません。その点、プッシュアップバーを使えばこの問題が解消します。
プッシュアップバーで鍛えられる筋肉
プッシュアップバーを使うことで筋肉を鍛えやすくなりますが、効果的に鍛えられる筋肉は限定的です。「プッシュアップバー」という名前が示すように、プッシュアップバーが威力を発揮するのは上半身の押し系の筋肉です。
具体的には大胸筋、肩、上腕三頭筋になります。使い方を応用することで腹筋も鍛えることができますが、プッシュアップバーで鍛えることができるのはここまでです。
背中、上腕二頭筋については、間接的に鍛えられる部分がないでもないという程度で、事実上ほとんど鍛えられません。脚にしても、プッシュアップバーではほとんど鍛えられません。
プッシュアップバーで筋肉を効果的に鍛える方法
プッシュアップバーで筋肉を効果的に鍛える方法をご紹介します。
プッシュアップバーは全身の筋肉に使える器具ではありません。この器具で鍛えられる筋肉は上記のように事実上、大胸筋、肩、上腕三頭筋、腹筋に限られます。プッシュアップバーはこれらの筋肉を鍛える器具だと割り切って使った方がいいでしょう。
大胸筋を鍛える方法
大胸筋を効果的に鍛えるためにはまず、プッシュアップバーを肩幅よりもやや広めにして床に置きます。手で握るハンドルの角度は平行、ハの字、水平にするパターンがありますが、最初は平行に置いた状態でやってみましょう。実際にやってみて、角度を変えた方が効きそうなら角度を少しずつ変えて試してみるといいでしょう。
プッシュアップバーを使うことで最も効果的に鍛えられるのが大胸筋です。大胸筋を鍛える際に一番効くポイントが大胸筋をフルにストレッチさせた状態から上体を押すときです。
上体を挙げ切ったときは肘を完全に真っすぐに伸ばし切るのではなく、少し余裕を残してすぐに降ろした方が効きます。肘を完全にロックアウトしてしまうと大胸筋の緊張状態が解けてしまうからです。
1セットを10回、3セットから始めてみましょう。
すぐに回数を増やせるようになりますから、20回ぐらいが簡単にできるようなら、足を椅子に乗せるなどして大胸筋にかかる負荷を高くしましょう。それでも足りなくなるようなら、背中に重りを乗せるとか、背中に人に乗ってもらう方法もあります。
大胸筋にかかる負荷を増やす方法以外にも、インターバルを短くしたり、さらにセット数を増やすなど、強度を高める方法があります。
参考動画:プッシュアップバーで大胸筋を鍛える!
プッシュアップバーで肩を鍛える方法
プッシュアップバーで肩を鍛えるには、前屈した姿勢でプッシュアップバーのバーを握り、上体をできるだけプッシュアップバーに対して垂直になるようにして、肩の力で上半身を持ち上げる動作を繰り返します。コツとしては負荷が直接肩にかかるように、脚にはあまり力を入れないようにします。
体を支えるためには完全に脚の力を抜いてしまうわけにはいきませんが、必要以上に脚に力が入っていると、肩にかかる負荷が軽くなってしまいます。できるだけ上体の重さが肩にかけるようにします。上体が肩に対して垂直になるほど負荷が肩に直接かかります。
プッシュアップバーの位置は肩幅よりもやや広いぐらいが丁度いいです。プッシュアップバーの方向は平行にするか、横一線に並べる方法があります。横一線の方が肩に効かしやすい場合が多いですが、実際にやってみて、効かしやすい方を選択しましょう。
強度を高める方法としては、大胸筋の場合と同じように、台の上に足を乗せて肩にかかる負荷を大きくするところからやってみましょう。足を台に乗せると言っても、肩の運動の場合は前屈した少々無理な態勢であることもあって、それほど負荷を重くすることはできません。
足を台に乗せてもまだ負荷が軽いようであれば、逆立ちして、肩で体全体を持ち上げるプレス動作をする方法もあります。この方法はしかし、かなりの筋力が必要ですからいきなり挑戦してはいけません。さらに、逆立ちした状態での肩プレスをする動作はバランスを崩すと危険ですから慎重に行なってください。
壁がないところで自力で倒立した状態でこの動作ができる人もいますが、バランスを取るのが難しいですから、壁に足をかけた状態でやってみましょう。
プッシュアップバーで上記のように肩を鍛えることができますが、肩の筋肉は前部、中部、後部に分かれています。それで三角筋と呼ばれているわけですが、プッシュアップバーで鍛えられるのはこれらのうち、前部と中部ぐらいまでです。後部についてはあまり期待できません。
参考動画:逆立ちで肩(三角筋)を強烈に刺激して新たな成長を引き出す
プッシュアップバーで上腕三頭筋を鍛える方法
上腕三頭筋を効果的に鍛えるにはプッシュアップバーを置く間隔を狭くして運動します。バーの角度は横一線、ハの字、平行のいずれでも、自分で動かしやすい角度でかまいません。いろいろ試してみましょう。プッシュアップバーの間隔は20センチから30センチぐらいが効かせやすいです。
力の入れ方は、大胸筋の力を抜いた状態で上腕三頭筋だけに効かせるように動作を繰り返すようにします。大胸筋の力を抜きながら上腕三頭筋にだけ効かせるという感覚は慣れていないとわかりにくいかもしれませんが、上腕三頭筋にだけ力を入れる感覚でやってみると力の配分のコツがつかみやすいでしょう。
足を床につけた状態では負荷が軽くなってきたら、大胸筋を鍛える場合と同じように、足を台に乗せて上腕三頭筋にかかる負荷を高くしましょう。足を台に乗せると言ってもどこまでも台を高くはできませんから、台に乗せる高さが限界になってもまだ負荷が足りないようなら、背中に重りを乗せると効果的です。バーベルに使うプレートが乗せやすいです。
参考動画:プッシュアップバーの活用法 主に上腕三頭筋(二の腕)を鍛える腕立て伏せ
プッシュアップバーで腹筋を鍛える方法
床にプッシュアップバーを置き、腕で体全体を支えます。横から見ればL字に視えるのでL字腹筋とも呼ばれています。プッシュアップバーの高さが低いので、脚を床から浮かせるぐらいの高さからのスタートポジションになります。その状態からレッグレイズの要領で腹筋運動をします。
本来のレッグレイズに比べれば可動域が狭いですが、腹筋運動としての強度は十分に強いです。体の柔軟性が高い人なら脚をかなり高い位置まで上げることができます。
まとめ
プッシュアップバーを正しく使用すれば大胸筋、上腕三頭筋、肩、腹筋を効果的に鍛えることができます。普通の腕立て伏せでは床に手をついての運動になるため、どうしても床が邪魔して可動域が足りません。プッシュアップバーは手で握るバーの高さがあるために可動域が大幅に広くなり、普通の腕立て伏せよりも格段に効果が高くなります。
プッシュアップバーが優れているのは可動域だけでなく、手でバーを握ることで、動作が安定することです。普通の腕立て伏せでは床に手をつくためにどうしても手首が不自然な負荷がかかってしまいますが、プッシュアップバーだと握りやすいバーを手で握ることで、筋肉にダイレクトに負荷をかけやすいです。
ただ、バーに垂直に負荷をかけるようにしないとプッシュアップバーが倒れたりすることがありますから注意しましょう。特にディーププッシュアップバーの場合は高さがあるので動作に気をつけないと倒れやすいです。
プッシュアップバーは万能ではありません。上半身の押し系の筋肉を鍛えるには効果的ですが、背中や上腕二頭筋、脚についてはほとんど効果がありません。プッシュアップバーという名前が示す通り、押し系の種目に特化した筋トレグッズです。