背中を鍛える効果的な筋トレとトレーニングの注意点
ダイエットのために筋トレをしている方でも、背中の筋トレを積極的に行っている方は、あまり多くありません。
女性の場合は、背中が広くなると体つきが男らしくなってしまうのでは?という懸念があると思います。男性の場合も、あえて背中の筋トレをする意義を感じない、という方がわりと多いのではないでしょうか。
でも、背中のシェイプアップは、皆さんが思っているよりも大切です。体のラインを整えるだけでなく、肩こりや腰痛の解消など、健康面でも効果があります。
背中の筋トレの効果や、トレーニング方法を紹介します。
背筋の名称と各部の機能
背中の筋肉のことを、わたしたちはまとめて「背筋」と呼んでいますが、背筋は1枚の筋肉ではなく、いくつかの筋肉があつまって構成されています。
筋トレするときには、その中でも比較的大きな、「僧帽筋」、「広背筋」、「脊柱起立筋」、この3つの筋肉を意識して行いましょう。
僧帽筋の位置と機能
僧帽筋は背中上部の筋肉になります。首筋と肩をつなぐように、ちょうどダイヤ型をしており、僧帽筋という名称は、この形が修道士がかぶるフードに似ていることからつけられたのです。
僧帽筋は肩を上げ下げする際に使う筋肉です。その他には、肩甲骨を支え、動かすときにも使います。首や肩がこったとき、疲労しているのはほとんどの場合、この僧帽筋です。
広背筋の位置と機能
広背筋は、脇の下のすぐ下から、腰のあたりまでを覆っている筋肉です。中世の女性が着ていたドレスで、ウエストにコルセットが入ったものがありますが、ちょうど、このコルセットと同じ位置にあると思ってください。
広背筋の役割は、まずは、背筋を支えることがあります。まさしくコルセットですね。他には、肩や上腕を動かしたり、物を引っ張りあげる際にも使う筋肉です。
脊柱起立筋の位置と機能
脊柱起立筋は、僧帽筋や広背筋と比べるとマイナーな筋肉かもしれません。前者2つの名称は知っているけれど、これは聞いたことがないな、という方も多いかもしれませんね。
脊柱起立筋は、首筋から尾てい骨のあたりまで、背骨に沿うようにして細長く走っている筋肉です。1本の筋肉ではなく、9つのパーツから構成されており、首・腰・肋骨を複雑につないでいます。
そのため、背筋を伸ばす、体を起こすといった基本的な動きをサポートするだけでなく、全身の多種多様な動作をサポートする、大切な筋肉です。
では、それぞれの位置や機能がわかったところで、さっそくトレーニングを行ってみましょう。
僧帽筋のトレーニング
僧帽筋は肩や背中をすくめたり、物を持ち上げるといったトレーニングがメインになります。
筋肉の機能に沿ったトレーニング法になりますので、他の部位のトレーニングの際も、前述の筋肉の機能を確認しながら行うとよいでしょう。
僧帽筋のトレーニングはダンベルを使用することが多いのですが、いきなりダンベルでは負担が大きいですし、腰や背中を傷めるリスクがありますので、この記事ではできるだけ、ダンベルなしで行えるトレーニング方法を紹介していきます。
自重を使った僧帽筋トレーニング
器具を使わずに、自分の体重を利用したトレーニングです。簡単なものとしては、肩や腕の上げ下げによるトレーニングがあります。
肩をぐっとすくめ、数秒間キープしたのち、ゆっくりと下ろします。
腕を使ったトレーニングは、少し前かがみになって立ち、背筋を伸ばします。背中を伸ばして軽くおじぎをする感じです。
親指を下へ向けて、両手をゆっくりと開きます。背筋に緊張を感じたら、ゆっくりと戻します。数回繰り返してください。
簡単なトレーニングですが、イメージよりも負荷がかかります。無理をしないようにしましょう。
アップライトローイング
ダンベルやバーベルの代わりにトレーニング用のゴムチューブを使用します。負荷を自由に選べますし、間違って落とすリスクもありません。
アップライトローイングは肩部分を鍛えるトレーニングです。
- チューブの両端を握り、チューブの真ん中あたりを両足で押さえて立ちます。
- チューブを胸の前で引っ張り、肘が水平より少し上がったところで数秒間キープします。
懸垂
- 梁や鉄棒などにチューブをかけ、両端を握ります。
- 胸を張り、状態を少し反らせながら、チューブを引き下げます。
- 手があごの位置に来るまで引き下げたら、またゆっくりと元の位置まで戻します。
広背筋のトレーニング
広背筋は、物を持ち上げたり、引き上げるトレーニングによって鍛えることができます。
ベントローイング
足元から物を持ち上げる動作のトレーニングです。
- 背中を伸ばしたまま中腰で立ちます。
- チューブの真ん中あたりを両足で押さえて端を握り、お腹の方へ引き寄せるようにチューブを引っ張ります。
- 腕や肩で引き上げないように注意して、広背筋を縮めるように意識しながら引っ張ります。
ダンベルローイング
- 前かがみになって片手を何か台の上につきます。
- もう片方の手でダンベルを持ち、肘を引き上げるようにして持ち上げます。
このトレーニングでも、腕ではなく、背中で持ち上げるようにしましょう。チューブを使って行うこともできます。
デッドリフト
- チューブの真ん中あたりを両足で押さえます。
- 背中を伸ばしたまま中腰になり、チューブを適当な長さで握ります。
- そのまま上体を起こしていき、直立したら肩甲骨を寄せるようにして背筋を縮め、キープしたのち、ゆっくりと戻します。
ベントローイングはチューブを引くときに肘を曲げますが、こちらのデッドリフトは基本的に肘は伸ばしたまま、上体を起こすことでチューブを引く点が異なります。
重量挙げで、バーベルを足元から持ち上げるときの動作を参考にするとうまくできます。
上体の稼動範囲が広いトレーニングなので、チューブは少し弱いものを使った方がやりやすいかもしれません。
デッドリフトは、広背筋のトレーニング方法として紹介しましたが、実は僧帽筋にも脊柱起立筋にも効果のあるトレーニングです。
背筋全体に働きかけることができますので、背中のトレーニングのメニューには、ぜひ入れたいですね。
脊柱起立筋のトレーニング
上で紹介したトレーニングメニューのうち、デッドリフトとダンベルローイングは、脊柱起立筋にも効果のあるトレーニングです。
この他に脊柱起立筋に効く運動としては、アームレッグレイズがあります。
動物のように両手と両膝を床について、4つんばいになります。ここから、対角線上の片手片足を床と水平になるように持ち上げます。
つまり、右手を上げるときは一緒に左足を上げるわけです。同様に、左手を上げるときは、右足を上げます。そのまま10秒ほどキープしましょう。
背筋を鍛えるメリットとは
肩こり、首こりの解消
肩や首がこる原因のひとつに、重い頭部を支えているうちに、筋肉が疲労することがあげられます。
僧帽筋を強化することで頭部の重量を楽に支えることができるようになり、肩こりが少なくなります。
姿勢がよくなり、猫背が解消される
立ったり、いすに座っているときに自然と背中が曲がったり、前かがみになってしまう人は、体を支える背筋の筋力が弱っていることが多いです。
背中がきちんと伸びていると、見た目の印象も生き生きとします。
逆三角形のボディラインになる
背中の上部を鍛えることで、憧れの逆三角形のボディラインを手に入れることができます。女性はウエストにくびれを作ることができますよ。
背中の幅が広がって男らしいラインになるのを恐れる女性の方が多いですが、背中は筋肉がつきづらい部位なので、よほど強い負荷でトレーニングしない限り心配はありません。
血行が促進される
トレーニングによって筋繊維が太く発達すると、筋肉を流れる血液の量も増加し、血行の改善につながります。
背中は大きな筋肉が多いので、背中全体を鍛えると、大きな血行改善効果が期待できます。冷え性の改善の他、基礎代謝がアップするのでダイエット効果も期待できます。
バストアップできる
これは女性にはうれしい効果です。
背中が猫背ぎみだと、胸の筋肉が縮むので自然とバストは下を向いてしまいます。
背筋を鍛えて背中をしっかり伸ばすとバストも上がりますから、バストアップの第一歩になります。
血行がよくなることで、女性ホルモンの分泌が促進されるのもポイントです。
背筋トレーニングの注意点
バランスよく行う
背中に限った話ではありませんが、筋力トレーニングを行うときは、特定の部位に偏らないようにすることが大切です。
たとえば、肩幅を広くしようとして僧帽筋だけを鍛えると、背中下部とのバランスが崩れ、筋肉を傷めるリスクがあります。
また、背筋を鍛えるときは腹筋も一緒に鍛えるようにしましょう。
筋肉というのはバネのようなもので、筋力が強くなるとその分、縮む力が強くなります。バネが太くなるとイメージしてください。
もしも一方のバネだけが太くなって、もう片方のバネが細いままだと、細い方のバネに負担がかかったり、ダメージを受けてしまったりしますよね。
筋肉はパーツごとに独立しているのではなく、いろいろなパーツがリンクし合って動いているので、できるだけ多様な部分を鍛えるようにしましょう。
負荷をかけすぎない
先程少し触れましたが、背中というのは筋肉がつきづらい部位に入ります。でも、早く効果を出そうと、強い負荷でトレーニングするのはリスクがあります。
背筋は体を支える筋肉ですから、背筋を傷めてしまうと、立ったり座ったりといった日常の動作に支障がでてしまいます。ぎっくり腰をやったことがある方はわかりますよね。
そこまで深刻なレベルでなくても、背中は筋肉痛になるだけでもかなり辛いです。また、疲労から筋肉がこわばったりすると、胃腸の働きが阻害されて便秘や下痢などのトラブルが起きる場合も……。
こうしたトラブルを避けるためにも、特にトレーニングを始めて日が浅いうちは、少し軽すぎるくらいの負荷で行った方がよいでしょう。
そして、トレーニング後はストレッチをしてクールダウンすることも大切です。