筋肉トレーニングにおける最大筋力の把握とオールアウトの重要さについて
筋力UPのトレーニングで、あなたはどのようにトレーニングしていますか?
腹筋100回!腕立て伏せ100回!!なんていう勢いでのトレーニングも、やる気は十分に認められるでしょうが、もっと効果的な筋力UPのトレーニング方法があります。
パワーが必要なスポーツ選手の、太く強靭な筋肉を生み出す筋力トレーニング。それは、パワーやスピードを生み出す速筋を、「普段よりやや強めの運動」で鍛えること。
筋肉を過負荷(オーバーロード)の強度で鍛え筋肉の完全消耗(オールアウト)を行い、適切な休息をとり、バランス良く栄養を摂取していけば、誰でも必ず筋力UPは見込めるでしょう!
1.筋力UPには、最大筋力の2/3以上の高負荷が必要
~誰でも筋肉のパワーを向上させる速筋トレーニング方法~
1-1.誰でも「けっこう負けず嫌い」な筋肉を活かすトレーニング方法
あなたは「自分はもともとあまりパワーがないほうだし、筋力トレーニングをしてもあまり効果がないんじゃないか……」と不安になっていませんか?
大丈夫です!筋力トレーニングを行えば、誰でもある程度は、現在の筋力を高めることができるのです。
それは、筋肉自体に「負けず嫌い」の性質があるからです。
あなたが、鉄棒で懸垂をやったとします。十回やるのが限界で、もう腕に力が入らなくなったとします。このとき筋肉に何が起きるのか。「今度は十回以上懸垂できる腕になりたい」とやる気になるのです。
その証拠に、次の機会に懸垂をしてみると、きっと十回以上できるはずです。
このように、「負けず嫌い」な筋肉の特性を活かして、計画的に筋力を高めていく。それが、筋力トレーニングなのです。
1-2.「普段よりやや強めの運動」が効果的な筋力トレーニング
筋肉の「負けず嫌い」な性質を上手く利用して、確実に筋力UPをしていくためには、ただ漫然とスポーツや運動をしていけばいいというのではありません。
筋力UPには、「普段より強めの運動」が必要です。「日常水準を上回る運動」。筋肉に過負荷を掛け、オーバーロードさせます。強さが普段と同じかそれ以下では、筋力のUPは期待できないのです。
しかし、「普段より強め」といっても限界があります。
バーベルを両手で持ち上げるトレーニングで、40㎏が限界の人が、80㎏にチャレンジしたら……。頭の上に持ち上げる前に、そんな無理をすると、腕や足腰の筋肉や関節を痛めてしまうかもしれません。
筋肉の「負けず嫌い」な性質を上手く利用していくためには、運動の強さや量を少しずつ増やしていくことが大切なのです。
バーベルを両手で持ち上げるのが40㎏が限界の人は、次に挑戦してみるのは41㎏にします。それが成功したら、その時点で、41㎏が「普段の強さ」のトレーニングになるので、その次は42㎏に挑戦して、徐々に限界を上げていくのです。
このように、少しずつ運動の強さを増していく筋力トレーニングを守って筋力を向上させていけば、誰でも、パワー不足な方でも、必ず筋力が上がっていくことでしょう。
1-3.「普段より強め」の運動にも種類がある
~高負荷低回数がトレーニングの理想~
実際に筋力トレーニングを行うときに、どのくらいの重さのウェイトを、何回ぐらい上げればよいのでしょうか?
「普段より強め」の運動が、何㎏何回にあたるか。
スクワットをウェイトを使ってするにあたって、33㎏で1回持ち上げられるなら。
そして「30㎏で5回持ち上げられる」。「20㎏では20回」。「10㎏では30回」が、それぞれの重量の限界だとすると……。
いずれも、「普段より強め」の運動ですが、パワーが必要なスポーツ向きの筋力をUPさせるのに効果的なのは、30㎏で5回持ち上げられる場合だけです。
なぜ30㎏で5回持ち上げられる以外がダメなのかというと、最大筋力の2/3以上のウェイトでトレーニングを行わないと、瞬発力がつかないからなのです。
最大筋力とは、あるトレーニングの種目、例えばスクワットで、一回だけしか持ち上げられない重量のことです。
先ほどのスクワットで、33㎏で1回持ち上げられるので、33㎏(最大筋力)×2/3ですから、22㎏が2/3にあたります。
つまり、20㎏、10㎏はそれ以下ですから、瞬発力はつかずパワーが必要なスポーツ向きの筋力をつけるためには不適当ということです。
かなり重いウェイトで少ない回数の筋力トレーニングをすること、つまり高負荷低回数のトレーニングが、パワーが必要なスポーツ向きの筋肉の瞬発力を生み出すのです。
1-4.パワーアップには速筋繊維を鍛える
なぜ高負荷低回数のトレーニングが、パワーが必要なスポーツ向きの筋肉の瞬発力を大きくするのでしょう。それは、高負荷低回数のトレーニングが、速筋繊維を強化するためです。
筋肉は筋繊維という細い筋肉細胞の束でできていて、筋繊維が収縮することによってパワーが生み出されます。この筋繊維は、速筋繊維と遅筋繊維の二種類からできています。
速筋繊維は、遅筋繊維より収縮速度が速く張力も大きい繊維ですが、遅筋繊維に比べ、持久力がありません。一方遅筋繊維は、速筋繊維より収縮速度が遅く張力も小さい繊維ですが、速筋繊維に比べ持久力があります。
したがって、パワー向きの瞬発力を必要とする動作では、速筋繊維が活躍するので、高負荷低回数のトレーニングが必要となるわけです。
ただし、高負荷低回数は、トレーニングの理想であって、ビギナーには勧められません。ビギナーはまず、低負荷高回数から始め、トレーニングに慣れることが大切です。
2.効果的なトレーニングサイクル
~筋トレは休みなしに行うと逆効果になる~
2-1.トレーニングは超回復期に行う
毎日毎日筋力トレーニングを欠かさずに行いたいと思う気持ちはよくわかりますが、そんな無茶をすると、かえって筋力をパワーアップすることができません。
筋力トレーニングは、休息日を取り入れて行ってこそ、効果が上がるのです。
なぜなら筋力のレベルは、トレーニングをしている最中や直後にUPするのではなく、十分な休息後にトレーニング前のレベルを上回るからです。
トレーニング前の筋力レベルが10だったとすると、トレーニング中は7に落ち、休息によって8~9へと回復し、十分な休息が取られると10に戻り、そして次に劇的な現象が起きます。元のレベルを上回って11となるのです。この11となることを超回復と呼びます。
この超回復の時期にトレーニングを行えば、11を基礎レベルにすることができるので、次回のトレーニング後の休息期には、レベル12の超回復をむかえる可能性があるのです。
この繰り返しにより、筋力は段階的にUPしていくわけです。
2-2.3日前後置きのトレーニングが効果的
それでは具体的に、どれぐらいの休息期間を取ると超回復が起こるのでしょうか。一般的には、トレーニング後48~72時間の休息の後とされています。
人によってトレーニングの量や筋肉の回復力に違いがありますが、三日前後を目安にして、自分のリズムに合った休息期間を取るとよいでしょう。
インターバルを2日、3日、4日と、いろいろと試して、それぞれの筋肉の調子を比べてみると、自分に合った休息期間が分かるようになります。
3.最高のトレーニング効果を生み出すチェック・ポイント
3-1.最大筋力を正しく発揮してるか
●最大筋力を誤ると効果が上がらない
パワーが必要なスポーツ向きの瞬発力を大きくするには、最大筋力の2/3以上の重いウェイトを用い、低回数のトレーニングで行わなければなりません。しかし、この最大筋力というのがなかなか簡単には測っても姿を現さず、本来よりも少なく見積もってしまう傾向にあります。
最大筋力を低く見積もると、次のような困ったことが起きます。
- 最大筋力の2/3のウェイトを用いていると思ったが、それ以下だった。
- 本来の最大筋力の2/3以上には達していたが、本来の最大筋力をUPさせることがなかなかできない。
1.のケースでは、瞬発力のパワーアップが難しいです。本来の最大筋力が60㎏なのに54㎏と誤認したら、その2/3は36㎏となってしまい、本来の値の2/3、つまり40㎏より少なくなってしまいます。
2.のケースもやはり、瞬発力のパワーアップが思うように進みません。というのは、100㎏が本来の最大筋力なのに、これを80㎏と誤認して、70㎏でトレーニングしていたとします。誤認しても70㎏なら、本来の最大筋力の2/3に達していますが、反復回数に問題が出てきます。
100㎏に対する70㎏は70%で、反復回数は15回になるとします。80㎏に対する70㎏は、約87%で、反復回数は約6回になってしまうと……。
トレーニングを積むうちに、6回から7回、8回と反復回数を増やせたとしても、本来は15回が最大筋力なのですから、本当にパワーアップしたとは言えないのです。
●最大筋力を発揮するコツ~心理的限界を飛び越える~
最大筋力とは、いわばフルパワーです。
人の体は普通、フルパワーを避ける傾向にあります。心理的な抑制が働き、余計なエネルギーの消費を避けるためだと思われます。
したがって、フルパワーを出すためには、その心理的な抑制を意識的に解き放つことが必要です。
ウェイト・リフティングの選手の試技を思い出してみてください。彼らは試技の前に、必ず精神統一を行います。心理的抑制を解くカギとなるのです。
3-2.筋肉の完全消耗(オールアウト)をしていますか
●筋力UPにはオールアウトが必要
力強いスポーツのプレーなどをするためには、各部の筋肉の瞬発力を大きくする必要があり、各部の筋肉の瞬発力を大きくするには、速筋繊維を太くしなければなりません。
そして速筋繊維を太くするためには、高負荷低回数のトレーニングが欠かせません。では、高負荷低回数のトレーニングは、何セット行えばよいのでしょうか。
セットとは、ひとまとまりの反復回数のことです。スクワット40㎏×10回が適正回数だとしたら、10回で1セットとなります。
何セット行うべきか、一概には言えません。肝心なのは、筋肉の完全消耗(オールアウト)が達成できることです。
オールアウトとは、簡単に言って、ヘトヘトに疲れ切ることです。ですから、1セットで完全消耗できればそれでいいのですが、なかなかそうはいかないので、普通、1トレーニングの種目を数セット繰り返します。
さまざまな筋力トレーニングを、1~4セットほどで、数回から20回ほどに分けて行うとよいでしょう。
まとめ
筋力トレーニングで速筋を鍛え、パワー溢れる筋力をつくるためには
高負荷低回数、過負荷のトレーニング、最大筋力の2/3以上の重さのウェイトで、1トレーニングの種目を1~4セットほどのセット数で数回から20回ほどに分けて、筋肉の完全消耗でヘトヘトに疲れ切るぐらいまで行い、3日ほどの休息を取り筋肉の超回復による筋力UPを見込んで、そのサイクルで筋力トレーニングを行い続けるとよい。
最後に.いかがでしたでしょうか?筋力トレーニングは、正しく行い、適切な休息を取り、十分な栄養を取っていけば、誰でも確実に効果を発揮するのです。あなたも、正しい筋力トレーニングによって、筋力UPをしてみてください。