中殿筋とは?役割や鍛え方から、気になる腰痛との関係を徹底解説
年齢とともに、腰痛に悩まれる方は多いと思います。整形外科に通院しても治らない、レントゲンを撮っても異常はないと言われる、そんな方は中殿筋の筋力低下が問題かもしれません。
筋力低下が原因の腰痛は筋力トレーニングで改善されます。毎日、快適に生活するためにも一度中殿筋の筋力トレーニングを考えてみましょう。
中殿筋ってどんな筋肉?
お尻(臀部)には主に3つの筋肉、小殿筋・中殿筋・大殿筋があります。この3つの筋肉は小殿筋の一部上に中殿筋、中殿筋の一部の上に大殿筋と覆う形で付着しています。
付いている場所を詳しく説明すると、
起始:腸骨外側面で腸骨稜と後殿筋線背側の間、前殿筋線の腹側、殿筋腱膜から
停止:大腿骨大転子外側面につきます。
簡単に言うと骨盤上部から大腿骨についており、股関節のみに働く単関節筋(一つの関節のみに作用する)となります。
中殿筋の役割としては股関節外転(大腿骨を外側に動かす)を主としています。それに加えて、前部の筋肉は股関節屈曲(大腿骨をお腹の方へ近づける)の補助、後部の筋肉は伸展(大腿骨を後方へ持ち上げる)補助も行っています。
日常生活内での中殿筋の役割
役割としては股関節外転を主としますが、この股関節外転、日常生活ではどのような動作の時によく使われているかというと、歩行時や立位(片脚)時の骨盤の安定や重心位置の維持を行っています。
歩行の際、前方へ足を振り出すとき地面から足は離れます。その際に、骨盤と大腿骨を繋ぐ役割をするのも中殿筋の仕事であり、歩行時に反対側が振り出す際に片脚で体重を支持するのを助けるのも中殿筋の仕事です。
実際、中殿筋の動きを感じるには片脚で立ってもらいお尻を触ってみてください。もっこりと出てくる筋肉があると思いますが、これらが殿筋郡(小殿筋・中殿筋・大殿筋)なのです。また、中殿筋は歩行時またサイドステップ時も足に体重をかけて立っている時はいつでも動いているのです。
中殿筋の筋力チェック
上記にことを頭に置き中殿筋の筋力チェックをしてみましょう。
まず、中殿筋の役割の一つが股関節外転です。一度横向きに寝て膝を伸ばしたまま足をまっすぐにし持ち上げることはできるでしょうか?
この時、持ち上げるのが難しく腰がそったり、真横ではなく後ろや前に足が動いてしまった場合は代償動作であり中殿筋の筋力低下が考えられます。
その他にも片脚立位がぐらつき安定しない人や、片脚立位で左右の腰の高さを比べると持ち上げてる足の方が低くなっている(トレンデンブルク兆候)人も中殿筋の筋力低下が考えられます。
中殿筋と腰痛の関係
次に中殿筋の筋力低下がなぜ腰痛を引き起こすか考えていきましょう。
整形外科にてレントゲンをとり、骨に異常はないと診断された場合は大体が筋筋膜性腰痛であると考えられます。
この筋筋膜性疼痛とは、どこかの筋の筋力低下によりその筋を補うために違う筋が過剰に働くために固くなり痛みを発生させている状態です。
腰痛の原因の一つとして、よく挙げられるのが腰方形筋です。
この腰方形筋は腹筋群の一つであり、腸骨稜・腸腰靱帯から第12肋骨と腰椎1~4の椎体の肋骨突起に付着する腰椎の両側にある長方形の深層筋です。
この筋は主に骨盤と肋骨を繋ぐことで脊柱を安定させる役割があり、姿勢保持に大きく影響をもたらします。
この腰方形筋と中殿筋はそれぞれ骨盤に付着し、また筋膜で繋がっています。中殿筋のセクションで前部・後部で機能が違う事は記載しましたが、これにより骨盤前傾(前に倒す・大腿骨をお腹の方へ近づける)後傾(大腿骨を後方へ持ち上げる)をもつため筋力低下により機能不全を起こすと、骨盤のバランスをとることができず異常姿勢になってしまいます。
そうなると、筋膜で繋がっている腰方形筋は持続的伸長がかかり筋スパズムを引き起こし、筋繊維が損傷することで痛みを引き起こすのです。
筋トレの時の注意点!
では、筋トレを行いましょう!と言いたいところですが筋トレの正しい仕方を理解していなければせっかく筋トレしても無駄になってしまいます。ここで一つ筋トレをする際の7原則を理解しましょう。
- 過負荷の原則:同じ負荷でトレーニングをしていると、カラダがその負荷に慣れてしまい筋肉の成長が止まってしまいます。筋トレ効率を上げるためにも少しずつ負荷を増やしましょう。
- 漸進性の原則:筋肉に対して急激に負荷をあげると怪我に繋がる可能性があります。トレーニングの量と質を段階的に上げていき、筋肉への刺激を少しずつ増やしましょう。
- 全面性の原則:一部の部位ばかり鍛えていると身体のバランスが悪くなります。身体全体をバランスよく鍛えるとバランスが良くなり、パフォーマンスの向上に繋がります。
- 意識性の原則:鍛えるときは「どこの筋肉を使っているのか?」と目的をしっかりと意識することで、よりトレーニングの効果が上がります。
- 反復性の原則:トレーニングの成果は一度行った程度では表れません。繰り返し反復し継続することが大切です。
- 特異性の原則:トレーニングには、身体に与えた運動刺激の種類によって、その効果が異なります。柔道選手と同じトレーニングをしても、マラソンでは活かせません。負荷のかけ方、強度、量、速度、関節角度など、それぞれの目的に応じたトレーニング種目を選択する必要があります。
- 個別性の原則:体格や年齢、運動経験の有無などで、身体能力は違います。能力、体力、目的に合わせたトレーニングメニューを組み立てることが大切ということです。
中殿筋の鍛え方
7つの原則を考えながら中殿筋トレーニングを行っていきましょう。
まず、意識性の原則です。中殿筋トレーニングを行う際は中殿筋を意識する必要があります。そのため、運動前に中殿筋のストレッチを行い、意識性を高めましょう。
方法としては、
- 座った状態で背筋を伸ばし、ストレッチしたい中殿筋の膝を曲げ足首を反対の膝の上に置きましょう(片方だけあぐらをかくような形です)
- 上側の足の膝に手を置き、下の足と直角になるように固定します
- そのままお尻が伸びているのを感じながら身体を前に倒し20秒ほどキープしましょう。この時の注意点として、小刻みに動かすより持続的伸張(15~20秒)の方が効率的にストレッチすることができます。
ヒップアブダクション
- 横向けに寝て足の膝を伸ばしたまままっすぐにする。
- 上側の足をそのまま真横に上げる。
- ゆっくり持ち上げたら元の場所までまたゆっくり戻す。
この手順を繰り返すことで中殿筋の筋力トレーニングになります。この時のポイントとして真横にあげると一番中殿筋を使います。
疲れてくると腰がそったり、足を上げるときに真横ではなく前・後側に行ってしまうことがあるので注意しましょう。これは立位でも同様に行う事ができます。
次に、全面性の原則を用いて複合的な運動を行いましょう!
ワイドスクワット
- 普通のスクワットより足の幅は大きくします。
- 手は体の前でクロスさせて、椅子に座るように股関節から曲げてお尻を下ろしていきます。
- お尻をおろしてきて、太ももは床と並行になるまで下げたところで2秒キープします。
この運動がしんどい人は個別性・漸進性の原則を考え方法を少し変えましょう。まずはゆっくり椅子からの立ち座りから始めてみましょう。
逆にワイドスクワットが簡単な方は、過負荷の原則から負荷を上げたブルガリアンスクワットを行いましょう。
ブルガリアンスクワット
片足でスクワットの動作を行います。注意点としては、初めは片方の手を壁や椅子などで支えて行うといいでしょう。
最後に全身性の原則から、骨盤固定をより強化するサイドプランクを行いましょう。
サイドプランク
- 横向きに寝て、肘は90度にして肩の真下におきます。
- 頭から足首までが一直線になるように、お尻を上げてキープします。
注意点としては、この時に身体が前に捻れたり、お尻が後ろに出ないようにしましょう。
中殿筋のトレーニングとしては上記のようなトレーニングがあります。鍛え方は一通りわかったので、後は反復性の原則にもあるように三日坊主にならないように反復していきましょう。
中殿筋のトレーニングで身体のコンディションを最適に
これらのことから中殿筋は骨盤を安定させる筋肉であり、鍛えることで腰痛予防また歩行時の安定性向上、きれいな姿勢キープ効果と身体のコンディションを良い方へ導いてくれます。
より健康に生活するためにも中殿筋トレーニングを是非継続的に行ってみましょう。