ナローグリップベンチプレスの効果と正しいやり方【降ろす位置・重量・手幅・肘】
バーベルベンチプレスは大胸筋を鍛えるための基本種目ですが、普通に大胸筋を鍛えるための手幅では上腕三頭筋はあまり刺激されません。これを解決するのがナローグリップベンチプレスにすることです。
普通のベンチプレスでは大胸筋も外側から中央部についての刺激が強い反面、大胸筋の内側への刺激は十分ではありません。手幅を狭くしたナローグリップベンチプレスにすることで、上腕三頭筋と大胸筋の内側が強く刺激されることになります。ナローグリップベンチプレスの正しいやり方をご紹介します。
ナローグリップベンチプレスの効果
肩幅よりも広い手幅で行なうベンチプレスは大胸筋を鍛える代表的な筋トレ種目ですが、この手幅を狭くすることで効かせられる筋肉が劇的に変わります。
ナローグリップベンチプレスの効果についてご説明しましょう。
上腕三頭筋が鍛えられる
普通のベンチプレスでも間接的に上腕三頭筋が鍛えられますが、メインは大胸筋ですから、上腕三頭筋にはそれほど効きません。手幅を肩幅よりも広くすると脇から離れて上腕三頭筋の関与率が下がります。そのため、ベンチプレスを普通に行なっているだけでは上腕三頭筋を劇的に発達させることはできません。
これに対して、手幅を狭くすることでナローグリップベンチプレスにすると、上腕三頭筋に効かしやすくなります。高重量も扱えますし、上腕三頭筋を発達させる効果が劇的に上ります。
上腕三頭筋には名前の通り、長頭、外側頭、内側頭の3つに分かれています。ナローグリップベンチプレスが効果的なのはこれらの三頭をすべて刺激することです。
大胸筋の内側が鍛えられる
ナローグリップベンチプレスのもうひとつの効果が大胸筋の内側も鍛えられることです。
普通のベンチプレスでは大胸筋の外側ほど強く刺激されますから、内側までは刺激が行き渡りません。大胸筋の内側を集中的に鍛えようと思ったら、ペックフライマシンなど、種目が限定されます。ナローグリップベンチプレスは数少ない大胸筋の内側を効果的に鍛える筋トレ種目です。
大胸筋の内側と上腕三頭筋を同時に鍛える
大胸筋の内側と上腕三頭筋をナローグリップベンチプレスで個別に鍛えることも出来ますが、中間的な方法で両方同時に鍛えることもできます。
大胸筋と上腕三頭筋を同じ日に鍛えるような場合に使える方法です。
ナローグリップベンチプレスで扱える重量
ナローグリップベンチプレスでどれぐらいの重量が扱えるかを考えてみましょう。
手幅で扱える重量が変わる
ベンチプレスは手幅の広さによって扱える重量が変わります。手幅が広いほど高重量が扱いやすいですが、広過ぎればかえって重量が下がります。
最も高重量が扱える手幅はバーベルを降ろし切った状態で前腕骨が垂直になるぐらいの幅です。
肘の開きの角度との関係で、肩幅の1.5倍ぐらいが丁度いいことが多いでしょう。
ナローグリップベンチプレスで扱える重量
次にナローグリップベンチプレスで扱える重量ですが、普通のベンチプレスの60%から70%ぐらいが目安になります。
しかし、これは目安であって、実際には体型などによって個人差があります。
大胸筋を鍛えるためのベンチプレスで100キロで繰り返せるとしたら、ナローグリップベンチプレスで60キロから70キロあたりで同じぐらいの回数をこなせるでしょう。
しかし、実際にナローグリップベンチプレスを行なう際に、軽い重量でウォーミングアップセットをこなしながら確かめるのが一番確実です。
上腕三頭筋が非常に強い人の場合、70%どころか80%以上の重量で出来る場合もありますし、逆に60%でも苦しい場合もあります。
ナローグリップベンチプレスでバーを下ろす位置
ナローグリップベンチプレスでバーを下す位置というのは迷いやすいところです。体型や上腕部の長さなどによってもバーを下すべき位置が変わってきます。
肩関節を中心に円を描いた軌道
肩関節を中心に円を描いた軌道でバーを下します。手幅との関係で、その動きで最も自然な位置にバーが下りることになります。
肩の位置としては、肩を決してすぼめないようにします。肩をすぼめてしまうと肩の位置が上がってしまって、その位置を基準に円を描く軌道にすると、正しい位置にバーを下せません。
上腕骨の長さに影響される
ナローグリップベンチプレスでバーを下す位置は上腕骨の長さによっても影響されます。
上腕骨が長いほどにバーの位置が下がります。上腕骨の長さと肩幅の関係でもバーの下す位置が変わりますから、ひと言でナローグリップベンチプレスでバーを下す位置と言ってもかなりバリエーションが多いことになります。
効かせる筋肉によって下す位置が変わる
上腕三頭筋に効かせるのか、大胸筋内部に効かせるのかによってもバーを下すべき位置が変わります。
上腕三頭筋を鍛える場合は手幅を肩幅と同じぐらいにして、肘を内側にややすぼめるようにします。その状態で自然に下せば、乳首のあたりにバーが下りることになります。
一方、大胸筋に効かせる場合は手幅を肩幅よりも狭くして、肘を体側からやや離します。その状態で下せば、乳首よりも上に下りることになります。
手首との関係
ナローグリップベンチプレスではバーを下した際に普通のベンチプレスに比べて手首に負担になる場合があります。
手幅を狭くするほど手首の負担が大きくなる傾向があります。
バーが真っすぐなのに対して、狭い手幅で握ると、手首の角度がやや不自然になって負担になります。これは、手首の強さや柔軟性によっても影響されます。
実際にナローグリップベンチプレスをやってみて、手首に違和感を感じたら、手幅をやや広くしたり、手首の角度を変えてみましょう。
ナローグリップベンチプレスの効果的な手幅と肘の使い方
ナローグリップベンチプレスは上腕三頭筋と大胸筋の内側を鍛えますが、それぞれを個別に集中的に鍛えるには手幅を変える必要があります。
上腕三頭筋に効かせる場合
上腕三頭筋を集中して鍛えたい場合は肩幅と同じぐらいの手幅にします。ナローグリップベンチプレスとしては広めの手幅になります。手幅と肘の位置、そして使い方で大胸筋の関与を減らして、上腕三頭筋に負荷を集中させます。
肘は手幅を肩幅ぐらいにすることに連動して、バーを降ろし切った際に体側に近くします。ぴったり脇につけるぐらいの感じです。
バーを押す時、降ろす際の肘の使い方も重要です。肘を真っすぐに降ろして挙げるのではなく、途中の軌道は内側に捻りながら、フィニッシュポイントでは外側に押すような感じです。この感覚がつかめると上腕三頭筋に効かしやすいです。
また、手幅や肘の使い方以外のポイントとして、上腕三頭筋に効かすときは胸を張らないようにします。むしろ胸をすぼめながら動作するぐらいにすることで、より上腕三頭筋に効かしやすくなります。
大胸筋内側に効かせる場合
次に、大胸筋の内側に効かせるには、手幅を20センチぐらいまで狭くします。
そして、肘は上腕三頭筋の場合とは逆に体側から開くようにします。そうすることで、上腕三頭筋の関与を減らして大胸筋の内側に負荷を集中させます。
さらに、上腕三頭筋の場合の逆で、胸を張るようにします。普通のベンチプレスでもそうですが、大胸筋に効かすには胸を張るようにするのがコツです。
ナローグリップベンチプレスをEZバーで効果的に行なう方法
ナローグリップベンチプレスはストレートバーで行なうのが一般的ですが、EZバーを使う方法もあります。
EZバーでのナローグリップベンチプレスの特徴について見てみましょう。
手首の負担が少ない
EZバーは手で握るバーが「ハ」の字の形になっているため、手首の負担が少ないメリットがあります。
ストレートバーで上腕三頭筋を鍛える場合は手幅が肩幅ぐらいなので、それほど手首に負担がきませんが、大胸筋の内側を鍛えるためにさらに手幅を狭くすると人によっては手首に負担がかかります。その意味で、ストレートバーでは手首に違和感や痛みが出る人はEZバーで試してみるといいでしょう。
EZバーでの上腕三頭筋の効き方
上腕三頭筋を鍛えるためにEZバーでナローグリップベンチプレスをすると、ストレートバーとは効き方が違います。
ストレートバーの場合は上腕三頭筋の長頭、外側頭、内側頭のすべてに効くのに対して、EZバーの場合は外側頭に強く効きます。
EZバーではグリップ部分が「ハ」の字になっていることで、肘が自然と体側から開くことと関係しています。
手幅の調節ができない
グリップ部分が「ハ」の字になっているため、手幅を調節することができません。
EZバーのグリップ部分は手幅狭い「ハ」の字部分と手幅が広い「ハ」の字部分がありますが、実際にナローグリップベンチプレスで使えるのは狭い方のグリップ部分です。
ストレートバーであれば、自分に合うように細かく手幅を調節できますが、EZではそれが事実上できません。
大胸筋の内側への効かし方
EZバーでは手幅を調節できないために、上腕三頭筋を鍛える場合でも、大胸筋の内側を鍛える場合でも肘の開きが変わらないため、ストレートバーに比べて鍛える筋肉を差別化しにくいです。
ストレートバーであれば、手幅と肘の使い方で上腕三頭筋と大胸筋の内側を鍛え分けがやりやすいのと対照的です。
そこで、大胸筋の内側を鍛える際には胸を張るようにします。そうすることで上腕三頭筋の関与率を下げることができます。逆に上腕三頭筋をターゲットにする場合は胸をすぼめるようにするのはストレートバーの場合と同じです。
ナローベンチプレスでの肩甲骨の使い方
ナローグリップベンチプレスでは手幅や肘の使い方だけでなく、肩甲骨の使い方も重要です。動作中、肩甲骨を内側に寄せるようにします。バーを上下させる際に肩甲骨を開いてしまうと、特に大胸筋から負荷が逃げやすくなります。
上腕三頭筋については大胸筋ほど肩甲骨に影響されませんが、やはり内側に寄せた方が効かしやすいです。
肩甲骨を内側に寄せると肩が上りやすくなりますので、ここは上がらないように注意しましょう。肩の位置が上がると、ナローグリップベンチプレスの動作がぎこちなくなりますし、大胸筋の内側や上腕三頭筋の伸展率が下がり、刺激が弱くなります。
まとめ
ナローグリップベンチプレスは上腕三頭筋と大胸筋の内側を鍛える効果的な種目です。大胸筋の内側を鍛える筋トレ種目は決して多いとは言えませんから、貴重な種目だと言えます。ストレートバーを使った場合は手幅や肘などの使い方をコントロールすることで、上腕三頭筋と大胸筋の内側を鍛え分けることもできます。
EZバーで行なう場合はストレートバーほど筋肉を効かし分けることは難しいですが、胸を張るかどうかで鍛え分けることが可能です。しかし、総合的に見れば、汎用性という点も含めて、ストレートバーの方がナローグリップベンチプレスには向いているでしょう。
大胸筋の内側を鍛えるために行なう際に注意すべきは、種目の順番です。大胸筋のメニューの中で、終わりの方に入れるようにしましょう。
大胸筋の内側は範囲にしても狭いですし、最初の段階で鍛える部分ではありません。
大胸筋のメニューとしては最初にベンチプレスなどの基本種目で広い範囲で鍛えてから、順に範囲の狭い部分を鍛えるようにするのが原則です。この原則で言っても、大胸筋の内側は最後の方に鍛えることになります。
上腕三頭筋を鍛えるためであれば、基本種目としてもいいでしょう。バーベルやEZバーでのトライセップスエクステンションなどの明らかな基本種目を行なうのであれば第一種目として優先すべきですが、それ以外の種目との優先順位で言えば、かなり高いと考えていいでしょう。
扱える重量も重いですし、筋量アップに効果的です。