ベントオーバーローイングの正しいやり方と効果の上げ方を徹底解説
背中を鍛えるためのマシンが数え切れないほど開発されている時代ですが、基本的なベントオーバーローイングは広背筋を鍛える効果が大きい種目であることには違いないです。
しかし、ベントオーバーローイングというのは、効果があるにもかかわらず、正しいフォームで行なわれていない種目の代表格です。ベンチプレスやスクワットのように正しいやり方と間違ったやり方が見分けにくいことも原因かもしれません。
今回は正しいベントオーバーローイングの正しいやり方と効果の上げ方について解説いたします。
ベントオーバーローイングの効果
ベントオーバーローイングの効果として主なものが次の2点です。
広背筋を広く厚くする
ベントオーバーローイングを正しく行なえば、広背筋を広く、厚くすることができます。ケーブルやマシン種目よりも広背筋を大きくする効果があります。もちろん、個人差がありますが、ベントオーバーローイングで強いボディビルダーはもの凄い背中になっています。
現在のように多種多様な背中を鍛える筋トレ器具がある時代と違って、1960年代から1970年代あたりまでは背中のための筋トレ器具の種類には限りがありました。それでも、その時代にも凄い背中をしたボディビルダーが大勢いました。広背筋の広がりにしても厚みにしても、現在の感覚で見ても凄い背中をしたボディビルダーたちが多用したのがベントオーバーローイングです。
脊柱起立筋を強くする
広背筋の次に効果があるのが脊柱起立筋の強化と発達です。
高重量でベントオーバーローイングをするためには、上体を前傾した状態を維持することになります。これがかなり脊柱起立筋を強化します。その意味で、マシンのように体を固定した運動よりも広範囲に鍛えられます。
ベントオーバーローイングのやり方
ベントオーバーローイングの基本形を解説します。この種目は基本形を外れたフォームで行なわれていることが多いです。その理由として、基本形を理解した上で、応用した形にしているというより、もともとの基本フォームを知らないからだと考えられます。
しかし、基本形がわかっていれば、応用するにしても、より効果的なトレーニングができるでしょう。
背中は床に平行
背中を床に平行にした状態を基本にして運動します。完全な平行とまではいかなくても、平行に近いぐらいの姿勢で行なうのが、広背筋の伸展範囲を広くして効果的です。
運動中に状態の角度を同じなまま、絶対に維持しなくてはならないというわけではありません。むしろ、動作中の角度が変わる方が自然です。バーを引き切ったポイントでは平行よりやや上になり、バーを降ろし切って、広背筋を最大限にストレッチさせているポイントでは、床と背中が平行になるぐらいの感じです。
ベントオーバーローイングでよくある間違いが、上体の角度が高くなり過ぎることです。
上体を起こし過ぎると、降ろしたときの広背筋のストレッチが足りず、あまり効きません。高重量の割に大して効かない運動になってしまいます。
手幅
バーを握る手幅は肩幅よりも少し広いぐらいが広背筋に効かしやすいです。手幅が広過ぎると、広背筋の緊張が抜けやすいです。
逆に、手幅が狭過ぎると動きが窮屈になります。しかし、広過ぎるよりは狭いぐらいの方が広背筋の伸展と収縮をさせやすいです。
グリップ
バーを握るグリップは親指を外したサムレスグリップの方が効かしやすいです。
デッドリフトであれば、このサムレスグリップでは逆に力が入りにくくなりますが、ベントオーバーローイングではサムレスグリップの方がやりやすいです。手の向きは、手の甲が前に向くオーバーグリップで握ります。
肘の角度は自然に任せる
手幅が肩幅よりも少し広くした状態で、自然にバーを引けば、広背筋側から見た肘の角度は30度ぐらいになります。この角度が自然に任せておくぐらいが丁度いい角度になります。意識して肘を開く必要はありません。
バーを引く位置
バーを自然な角度で引くと、腹筋の真ん中から下腹部あたりにバーを引き切ることになります。腹筋の真ん中から下腹部あたりと、ある程度の幅があるのは、腕の長さと胴体の長さの比率などの個人差があるからです。肘の角度を自然にしておくと、バーを引く位置も最適化できます。
バーを引き切ったポイントで最大限に収縮させます。1レップスごとにしっかりと収縮させることで、1セット全体の効き方が大きく違います。
しっかりと収縮させるには重量が重過ぎてはいけません。必ずコントロールできる重量で行なうようにしましょう。
下でしっかりストレッチさせる
トップポジションでの収縮と並んで重要なのが、バーを降ろし切った際に広背筋をしっかりストレッチさせることです。その際、肘を伸ばし切ることよりも広背筋を伸ばすことを意識しましょう。
足幅とつま先
足幅は肩幅ぐらいか、ちょっと狭いぐらいがやりやすいです。つま先は正面に向けるようにします。
適切な重量を使う
ベントオーバーローイングが効かないトレーニーがよくしている間違いは扱う重量が重過ぎることです。
重量にこだわるのはいいですが、重過ぎるとフォームが崩れてしまいます。
背中の種目はベントオーバーローイングに限らず、収縮と伸展が効かせるカギです。重量が重過ぎるとこれらが不十分になります。
ベルトは必要か
トレーニングベルトが必要かどうかは個人差があるところです。下背部がかかる種目ですからトレーニングベルトを着用した方が安全ですが、スクワットなどのように体幹部に垂直に負荷がかかるわけではありませんから、ベルトがなくても腰を痛める可能性はスクワットなどに比べれば少ないです。そのため、この種目では必ずしもベルトが必要とは限りません。自分で実際にやってみて、腰の安全性に不安があるならば着用するようにしましょう。
トレーニングベルトには前面から背面まですべて同じ幅のパワーベルトと体の前面のバックル部分の幅が狭くなっている一般的なトレーニングベルトがありますが、ベントオーバーローイングのように体を前傾した種目では、体前面の幅が広いパワーベルトでは、邪魔になりやすいです。この種目では一般的なトレーニングベルトの方が使いやすいです。
台の上に立って行なう
しっかりストレッチさせるにはバーがかなり下まで降ろせるようにしておく必要がありますが、普通に床にバーベルを置いた状態で運動すると、バーベルのプレートが床についてしまい、十分なストレッチの邪魔になります。
そこで、台の上に乗ることで、ストレッチさせやすくなります。ジムにあるチンニング用の台が丁度いい高さです。頑丈にできているので安全性も高いです。チンニング用の台以外でも、適当な高さのブロックも使えます。
ベントオーバーローイングをベンチプレスのベンチやフラットベンチの上に立って行なっているトレーニーがいますが、足が滑って落ちる可能性があり、非常に危険です。フラットベンチは足を揃えて、やっと上に立てるぐらいの幅しかありませんから、ちょっとバランスを崩しただけで簡単に落下してしまいます。
そのような不安定な足場でベントオーバーローイングのように高重量を扱う種目を行なうのは非常に危険ですから、注意しましょう。
ベントオーバーローイングのトレーニング動画
ダンベルベントオーバーローイングのやり方を解説
ドリアンローイング
ベントオーバーローイングのバリエーションとしてよく知られているのがドリアンローイングと呼ばれるものです。ボディビルの最高峰であるミスター・オリンピアで1992年から1997年まで6連勝したドリアン・イエーツ選手が好んで行なっていたことから爆発的に普及しました。
普通のベントオーバーローイングとの違いについて解説いたします。
握り方が変わる
上記の普通のベントオーバーローイングとドリアンローイングの大きな違いはグリップの向きです。
普通のベントオーバーローイングではオーバーグリップでバーを握るのに対して、ドリアンローイングでは、アンダーグリップで握ります。
グリップの向きが違うという、大きな違いではないように見えますが、これが、運動全体を少なからず違ったものにしています。
手幅は肩幅ぐらい
普通のベントオーバーローイングでは手幅が肩幅よりも少し広くするのは、オーバーグリップでバーを握るからでもあります。オーバーグリップで握ると、肘を体側にぴったりつけると動きが窮屈になってしまいます。
これに対してドリアンローイングはアンダーグリップで握るため、肩幅ぐらいの方が動かしやすいです。
下でのストレッチがあまり効かない
ベントオーバーローイングで効かせるカギになるのが、バーを降ろし切って、広背筋をいかにストレッチさせるかです。ドリアンローイングでは、このストレッチ部分がややも弱くなります。これはアンダーグリップである以上避けられません。
どちらが効果があるか
普通のベントオーバーローイングとドリアンローイングではどちらが効果的かは興味がある所ですが、一般的には普通のベントオーバーローイングの方が効果がある人が多いでしょう。
しかし、筋トレ種目の相性というのはかなり個人差があります。現実にドリアン・イエーツ選手はドリアンローイングで驚異的な背中を作り上げています。
まとめ
ベントオーバーローイングについて解説いたしました。ベントオーバーローイングは広背筋の広さと厚みをつけるために非常に効果的です。しかし、フォームにしろ効かせるコツにしても、やや難しい種目です。しかし、正しい方法がわかれば、かなり効果を実感できるでしょう。
ベントオーバーローイングは重量が重過ぎると特に効かしにくくなります。ベントオーバーローイングは正確なフォームで行なえば、それほど重い重量ではできないことが多いですが、中にはフォームが正確でありながら、もの凄い重量が扱える人もいます。1983年のミスター・オリンピアで優勝したサミール・バヌー選手は背中を床と平行にした正確なフォームでありながら、200キロでベントオーバーローイングができました。
コンテスト当日の仕上がり体重が86キロであったことを考えても、極めて筋力が強かったです。しかし、このサミール・バヌー選手はベントオーバーローイング以外の他の種目でも筋力が極端に強かったわけではありません。このベントオーバーローイングを200キロできた当時のベンチプレスの使用重量が182キロで6回繰り返すぐらいであったことを考えても、ベントオーバーローイングに発揮できる筋力が特殊に強いタイプだったのでしょう。
ボディビルダーにもいろいろなタイプの人がいて、どの種目でもまんべんなく筋力が強いタイプの人もいれば、一部の種目がやたらと強いタイプの人もいます。どの種目でも強ければ理想ですが、一部にでも卓越した筋力が発揮できるなら、それは才能です。
ドリアンローイングの元になったドリアン・イーツ選手もアンダーグリップでありながら、200キロ以上でできました。これら2選手は正確なフォームで、もの凄い高重量が扱える極端な例でもありますが、ベントオーバーローイングでも、この種目で筋力が伸びるかどうかが効果があるかのひとつの基準になります。
あくまでも正確なフォームであることが前提ですが、ただ効かせるだけでなく、重量を伸ばすように努力しましょう。