片手腕立て伏せの効果とやり方のコツや正しいフォーム、強化方法
腕立て伏せは両手で行なうのが普通ですが、これを片手で行なう方法もあります。しかし、両手であれば結構な回数ができる腕立て伏せでも片手でとなるとかなり難しいです。
両手で100回出来るとしても、片手で半分の50回どころか10回でも難しいです。それだけ片手での腕立て伏せはかなり難易度が高いです。片手腕立て伏せの効果とやり方のコツ、強化方法について解説いたします。
片手腕立て伏せの特徴
片手腕立て伏せは両手での普通の腕立て伏せよりもはるかに難しいです。片手だから両手で行なう普通の腕立て伏せの半分の回数ができると思いがちですが、実際には5分の1ぐらいしかできません。片手腕立て伏せに慣れていなければ、5分の1どころか1回もできないでしょう。片手腕立て伏せの難しさは単純に筋力が強いだけではさほど回数をこなせないことです。
筋力が強くても、片手腕立て伏せという動作の練習をしたことがないと、大した回数はできません。片手腕立て伏せという動作そのものを練習して筋肉に学習させる必要があります。そうしないと片手腕立て伏せのための神経系が反応しません。しかし、逆に、基礎的な筋力が強い人であれば、片手腕立て伏せの練習をすることで、かなりの回数をこなせるようになります。
片手腕立て伏せで鍛えられる筋肉
普通の腕立て伏せであれば、大胸筋、上腕三頭筋、肩の前部が主に鍛えられますが、片手腕立て伏せでも基本的に同じです。しかし、その比率がかなり変わります。
普通の腕立て伏せであれば、大胸筋に効く比率が圧倒的に高く、その次が上腕三頭筋、肩の順番になります。肩の前面については、運動に関与はしていますが、直接的には実感できるほど刺激が強くありません。
それに対して片手腕立て伏せでは、次のように、刺激される比率が変わります。
大胸筋
普通の腕立て伏せであれば、最も運動に関与する比率が高いのが圧倒的に大胸筋です。全体の8割ぐらいが大胸筋の運動だと言えるでしょう。この点はベンチプレスと同じような比率になります。そのため、肩幅よりも広い手幅で鍛える腕立て伏せであれば、ほとんど大胸筋を鍛える種目だと言えるでしょう。
これが、片手腕立て伏せになると、大胸筋が鍛えられる比率がかなり下がります。運動時の態勢が半身になることから、両手の腕立て伏せほどには大胸筋を使わなくなるからです。
上腕三頭筋
片手腕立て伏せで一番筋力を使うのは上腕三頭筋です。上腕三頭筋が弱ければ片手腕立て伏せはできません。
普通の腕立て伏せでは上腕三頭筋が関与する比率は20~30%ぐらいのものですが、これが片手腕立て伏せになると50%から60%ぐらいまで跳ね上がります。実際、片手腕立て伏せをやってみれば、上腕三頭筋が最も疲労するのがわかるでしょう。
しかし、筋力が大幅に強くなって簡単に片手腕立て伏せを繰り返せるようになれば、上腕三頭筋の関与する比率が下がってきます。強くなればその分が余裕になって、大胸筋の方により効かせることが可能になります。
肩の前面
両手での腕立て伏せでも片手腕立て伏せにしても、肩の前面が関与していますが、片手腕立て伏せの方がかなり関与する比率が高いです。降ろし切ったときに肩の前面が強くストレッチして収縮することが理由でしょう。
両手での場合でも肩は使っていますが、実感として効いたというところまでは認識できないことが多いです。これに対して片手腕立て伏せのときは肩の前面がかなり疲労していることを実感できるでしょう。
片手腕立て伏せのやり方
片手腕立て伏せのやり方としては、片手で連続して行なう方法と、片方の腕で1回づつ交互に行なう方法があります。どちらが効果的かは一概には言えませんが、片方づつのパターンの方が難易度が高いです。
片方の腕で連続して繰り返すのであれば、態勢が同じまま維持できますが、交互に行なうとなると、体の態勢を1回づつ変えることになって、全身運動として見れば、交互の方が難しいです。
普通の腕立て伏せであれば、上半身の角度が床に対して平行になるのに対して、片手腕立て伏せの場合は上半身を45度に捻った状態になります。このため、片手づつ交互に行なうとなると、1回ごとに体全体を捻ることになって、バランスの取り方も含めて、片手で連続して行なう以上に筋力が必要になります。
映画「ロッキー」の中でロッキーを演じたシルベスター・スタローンがこのやり方の片手腕立て伏せでトレーニングする場面があります。片手できっちり深く降ろして、交互に難なく繰り返していました。これだけ見てもスタローンはかなりの筋力であることがわかります。
1回づつ交互に行なう場合は特に運動スピードとリズムが重要です。ゆっくり降ろして、というタイプの運動ではありません。反動を使うのはいけませんが、動作が必要以上に遅いと筋力を発揮できません。リズミカルな動作が理想です。
片手腕立て伏せの強化方法
片手腕立て伏せの強化方法についてご説明します。
普通の腕立て伏せの回数を伸ばす
片手腕立て伏せができるようにするためには、普通の腕立て伏せでかなりの回数ができないとまともな回数にはなりません。普通の腕立て伏せであれば、胸が床ぎりぎりまで降ろすぐらいの可動域で、100回連続でできるぐらいになればある程度は片手でもできるようになるでしょう。
これは個人差がありますから、100回まで行かなくても50回でも片手腕立て伏せに対応できる場合もあります。しかし、ひとつの目安として、50回きっちりコンスタントにできるようになったら、片手腕立て伏せに挑戦するのもおすすめです。
その際、片手でも必ず完全に下まで降ろすようにしましょう。上の方だけでちょっとだけ動かすようなやり方では筋力も何もつきません。片手腕立て伏せは実際にはかなりハードな鍛え方です。
片手腕立て伏せそのもので鍛える
そのため、片手腕立て伏せの回数を伸ばすには、片手腕立て伏せ自体で鍛えるのが効果的です。片手腕立て伏せを強くするには、筋力だけでなく、神経系がその動きに対応できるようにするのが効果的です。
両手での腕立て伏せを連続して凄い回数ができたとしても、片手腕立て伏せは簡単ではありません。回数というのはある程度以上になると、筋力以上に持久力の運動になってしまって、筋力自体は伸びなくなります。そのため、両手での腕立て伏せの回数を伸ばすことで片手腕立て伏せの記録を伸ばすには限界があります。
個々の筋肉を鍛えて強くする
片手腕立て伏せができるようにする近道は腕立て伏せ以外の筋トレで筋力全般を強くしてしまうことです。実は腕立て伏せの延長としての片手腕立て伏せよりも、バーベルなどの器具を使って、大胸筋、肩、上腕三頭筋などの筋肉を直接鍛えるのも効果的な方法です。
片手腕立て伏せで使われる筋肉そのものを個々に鍛えて強化すれば、片手腕立て伏せそのものも伸ばすことにつながります。スポーツのパフォーマンス能力が筋トレで伸びるのと同じ理屈です。
片手腕立て伏せのために強化すべき筋肉として最も重要なのが上腕三頭筋です。普通の腕立て伏せとはその点で優先順位が違います。
片手腕立て伏せのフォーム
片手腕立て伏せのフォームについて解説します。両手で行なう腕立て伏せと片手腕立て伏せではバランスを取るためもあって、フォームがかなり違います。
普通の腕立て伏せのフォームとの違いも含めて解説します。
足幅は肩幅の1.5倍
足幅は肩幅の1.5倍ぐらいになります。片手で体を支えるので、足幅が狭いとバランスが取りにくいからです。
普通の腕立て伏せであれば、両手、両足と体を支える支点が4つあるのに対して、片手腕立て伏せでは重い方の上半身を片手だけで支えるので、どうしても不安定になります。そのため、足幅を広めにした方がバランスが取りやすく運動しやすいです。
上半身が斜めになる
片手で体を支えるため、上半身をやや斜めに捻った形になります。これは片手だけで上半身を支える態勢であるため、避けられません。
その状態での動作になりますから、片手づつ交互に行なう方法だと、斜めな上体の態勢を逆方向に直すことを交互に繰り返すことになりますから、ある意味で体操選手のような空間制御力も要求されます。体操選手は筋力だけでなく、自分の体重をコントロールする能力が卓越していますから、片手腕立て伏せも軽々とこなすでしょう。
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まとめ
片手腕立て伏せは両手での腕立て伏せとはかなり動きが違います。片手では筋力的なハードルが高くなるというだけでなく、バランスを取るのが難しいです。両手という2つの支点で支えていたものを1つの支点で支えるのは慣れるまでやりにくいでしょう。
片手腕立て伏せを正しいフォームで行なえば、両手で行なうよりも個々の筋肉に対する負荷がかなり高くできます。ここで注意すべきは、必ず深くまで降ろすことです。普通の腕立て伏せでもそうですが、可動域が狭いと、ほとんど意味がありません。
片手腕立て伏せが普通の腕立て伏せに比べて難しいのが筋力だけでなく、バランスの取り方です。両手での腕立て伏せであれば、バランスの問題はほとんど起きませんが、片手腕立て伏せは筋力がはるかに必要であると共に、バランスを取るのが難しいので、慣れるまで練習が必要になります。
筋トレをマシンだけで行なっているような人は、特定の筋肉の使い方は上手くても、体全体を協調させて動かすのが上手くありません。そういう訓練をしていないのでできなくなっているとも言えます。片手腕立て伏せはバランスを取るのが難しい分、体全体の調整力も鍛えられます。