腕橈骨筋とは?作用・役割、鍛え方、遊びながらできる筋トレ法を解説
腕橈骨筋という筋肉をご存知でしょうか?筋肉といえば大胸筋・上腕二頭筋・大腿四頭筋が有名でよく聞きますね。実は筋肉というのは人体に400個あるといわれています。そして、その一つ一つの筋肉に役割があります。
今回は、コップや箸を持つとき、ラケット競技でスマッシュを打つときに大きな役割を果たす、腕橈骨筋という筋肉についてお話をしていきたいと思います。
腕橈骨筋とは?
腕橈骨筋はどこの筋肉?
腕橈骨筋は、前腕前面に付着している筋肉です。イラスト画像のBrachioradialisというのが腕橈骨筋を示しています。
ビールジョッキを持ち上げてみてください。親指の付け根あたりからから、肘にかけて盛り上がっている筋肉ありますよね?
それが腕橈骨筋です。
腕橈骨筋の作用
腕橈骨筋は主に肘を曲げる動作(屈曲という動作になります)に作用します。
そしてもう一つ。
小さく前ならえしてみてください。その状態で手のひらを上にしたり、下にしたりしてください。この動きを回内(手の平が内側にむく)と回外(手の平が外側にむく)という動きになります。腕橈骨筋は肘の屈曲と回内、回外に作用するのです。
また、上記に書いた、ビールジョッキを持ち上げる動作のような回内、回外の正中位(小さく前ならえの状態)で物を持ち上げて、肘を曲げるときに最大限に発揮されます。
日常生活での腕橈骨筋の役割
上記にも書いたように、回内外の正中位で肘を曲げるときに腕橈骨筋は最大限に力を発揮します。
日常生活の動作では、コップを持ち上げる、お茶やジュースを注ぐ、椅子や机を持ち上げるなどの動作に役立つ筋肉です。また、日曜大工ではハンマーを使うのにも役立ちます。
高齢者の方で、コップを両手で添えて、慎重に持ち上げて飲む方みえますね。これは腕橈骨筋の筋力低下によるものです。小さな子どもも片手でコップを持てないですね。これも腕橈骨筋が発達していないからです。
また、お箸やスプーンの使用にも腕橈骨筋が必要です。
お箸やスプーンを持つときも肘をやや曲げて、回内外の正中位を保持する必要があります。これは腕橈骨筋の役割が大きいです。
小さな子どもがスプーンを持つときに握り込んで手のひらを下にして持ちますね。これは腕橈骨筋がまだ発達していないため、正中位で保持することができずに、手のひらが下を向いてしまうためです。
このように日常生活の動作にもかなり必要な筋肉。それが腕橈骨筋です。
ラケット競技で役立つ腕橈骨筋
日常生活だけじゃなくて、スポーツにも役立つんです。
ラケットを持って、スマッシュを打つイメージをしてみてください。
上記に書いたような、回内外正中位で肘を曲げる動作に最も作用します。ラケットでスマッシュを打つときの手の動作。ちょうどこのような動作になりますね。そうです。力強く、スマッシュを打つためには一つに腕橈骨筋が非常に大切になってきます。
そのため、腕橈骨筋を鍛えることで、力強いスマッシュを獲得できるようになります。
腕橈骨筋に効く鍛え方
もっと力強いスマッシュを獲得したい。
コップを持つのが疲れてしまう。
そのような方へ腕橈骨筋の鍛え方をお伝えします。
ハンマーカールで鍛えよう
腕橈骨筋はビールジョッキを持ち上げる動作で最も作用します。そのため、ダンベルを縦に握り、親指を上に立てた状態で肘の曲げ伸ばしを行いましょう。
このような筋トレをすることでメインターゲットが腕橈骨筋に絞られ、効率よく腕橈骨筋を鍛えることができます。
動画:ハンマーカールのやり方-前腕と二頭筋を鍛えて太い腕を作る筋トレ
発達障がい児のための腕橈骨筋
発達障がい児の中にはお箸が持てないという悩みもよく聞きます。
お箸と腕橈骨筋がどう関連しているのかみていきましょう。
お箸と腕橈骨筋
まず、お箸を持ってみてください。
肘が曲がって、回内外正中位となっていますね。
そうです。お箸を持つときにも腕橈骨筋が働くのです。
発達障がい児がお箸が苦手な理由
発達障がい児のお箸が苦手な問題は、手の不器用さのみに着眼点が置かれやすいです。
もちろん、手の不器用さはお箸を持つ上で大きな原因の1つになります。
でも、意外と腕橈骨筋にアプローチすると改善することもあります。
というのは、発達障がい児の子たち、手を捻る回内外の動きや正中位で保持することが苦手な子が圧倒的に多いんです。
腕橈骨筋が働いていないのです。
お箸が苦手な理由は、指だけではなく、腕の問題もあるということです。
発達障がい児のための腕橈骨筋の鍛え方
大人の方の場合は、能動的に意欲的に筋トレを行うことができるため、ハンマーカールを用いて、腕橈骨筋を鍛えることができます。
発達障がい児の場合は、ハンマーカールを能動的かつ意欲的行うことは難しいです。そのため、遊びを通して、腕橈骨筋を鍛えていく必要があります。そもそも子どもというのは遊びの中で筋肉を発達させています。
腕橈骨筋を鍛える遊びとおもちゃ
腕橈骨筋を鍛えるための遊びとおもちゃを紹介したいと思います。
- チャンバラごっこやスイカわり
回内外の正中位で棒を持ち、上げたり下げたりすることで腕橈骨筋が働きます - アスレチックによじ登る
左右についている、手すりなどをしっかり握って、段を上がることで腕橈骨筋が働きます。 - ハンマートーイ
ハンマーで棒をたたいていくことで腕橈骨筋が働きます - もぐら叩きやワニワニパニック
ハンマートーイと同じ作用です。 - 椅子や机を運ぶ
遊びではないですが、ちょっとしたお手伝いでも腕橈骨筋が働きます。
このように日常的な遊びのなかに腕橈骨筋を鍛える要素がたくさん潜んでいます。
筋力トレーニングのポイント
効率の良い筋力トレーニングの方法
ただ闇雲に筋肉は動かせば、筋力がつくわけではありません。
人は集中しているときに、最大限の能力が発揮するといわれています。
例えば、やりたくもない勉強をしているときって集中できていなく、頭に入ってきませんよね?
逆に「これすごい面白い」と興味がある分野についてはすぐに頭に入ってきます。
筋力トレーニングも同様です。「疲れるな」「やりたくないな」と思いながら、行っていても筋力はついていきません。ただただ疲労感が生まれるのみです。
交感神経を高める
自律神経系には交感神経と副交感神経が存在します。交感神経は気持ちを高ぶらせます。逆に副交感神経は気持ちを落ちつかせます。
また、交感神経が優位に働いているときには、筋肉もしっかりと働きます。
眠たくてぼんやりしているときには、筋肉も緩んでいますね。
逆に楽しいと思ってスポーツにとりくんでいるときは、筋肉はしっかりと働いています。
交感神経を高めるには、身体を動かす必要があります。そして、興味・関心も必要になります。そのため、自分は何のために筋肉をつけたいのか、明確にして、筋力トレーニングに取り組むことが大切です。
筋肉を意識する
スポーツジムでは、マシンの横に鍛えられる筋肉の名前や筋肉が身体にどのようについているのか、絵が書いてあることが多いです。それはなぜかというと、筋肉を意識しやすいようにするためです。
トレーニングをしながら、どこの筋肉が働いていて、どの程度負荷がかかっているのかを感じながら行うことでより効果的に筋力をつけることができます。
遅筋と速筋
筋肉には遅筋と速筋の2つがあります。
速筋とは、その名の通り、速い動作に対して働く筋肉です。ジャンプしたり走ったりと瞬発的に使用する筋肉になります。
遅筋とは、速筋の逆でゆっくりな動きや姿勢などを保持するときに働く筋肉です。
よく、腹筋は割れているのに、姿勢が悪い人見かけますね。
それは、速筋ばかり鍛えているので姿勢を保持する遅筋が鍛えられていないからです。
腹筋はよく姿勢を保持するには、あまり役立ちません。ちなみによく姿勢を保持するためには、腹筋の下についている、腹斜筋や腹横筋、背中についている脊柱起立筋群を鍛えていく必要があります。
では、スマッシュはどうでしょうか?
腕橈骨筋の付着している腕を動かすというよりは、ラケットをしっかり握って、肘は固定した状態ですよね。実際に動かしているのは肘や手首ではなく、肩です。
そのため、この場合は遅筋を鍛える必要があります。
速筋を鍛えるためには、速い動きを繰り返します。
遅筋を鍛えるには、ゆっくりと持続的に行う必要があります。
要するに回数を稼ぐよりも、ハンマーカールでゆっくりと5秒くらいかけて、肘を曲げることを繰り返すことが必要になってきます。
最後に
上腕二頭筋・大胸筋・大腿四頭筋などの筋肉はよく聞くため、鍛えることがあると思います。しかし、今回お話した腕橈骨筋のようにあまり聞かないマイナーな筋肉にも日常的生活やスポーツなどで重要な役割を果たしています。
ボディービルダーのように筋肉を鍛えることを目的とするのであれば、特定の筋肉にターゲットを絞る必要はないと思います。
そうではなく、日常生活の中で困っている動作がある。スポーツでこの部分をもっと強くしたい。と具体的な目的がある場合は、その動作に必要な筋肉にターゲットを絞っていくことでより効率よく筋肉を強化していくことができます。
コップを持つ力が弱い、箸が持てない、もっと強いスマッシュを打ちたいなど目標や生活の中での困りごとがあるときには腕橈骨筋を鍛えてみてはどうでしょうか?
筋肉は単独で働くわけではなく、いくつかの筋肉が協調して働くことでスムーズな動作を行うことができます。その中でもメインで働く筋肉があり、今回はそのメインの筋肉に絞ってお話をしましたが、メインの筋肉のみを鍛えればすべて解決するわけではないことをご理解願えればと思います。