大臀筋の3つの作用と初心者向けの鍛え方5選
お尻のトレーニングと聞くと、ヒップアップしたい女性や、体重を気にしている方のためのエクササイズ、というイメージがあると思います。
でも、お尻の筋肉、大臀筋は、日常生活の動作に直結した、とても大切な筋肉。健康的な生活を送るためにも、しっかりと鍛えるべき筋肉です。
そこで、今回は、大臀筋の作用と、初心者でも簡単にできるエクササイズを紹介します。
大臀筋とは?
「大臀筋」。普段はちょっと耳慣れない名称ですが、これはお尻の筋肉です。大臀筋の「臀」は、そのまま「でん部」の「臀」です。
お尻の筋肉は大きく分類すると、「大臀筋」、「中臀筋」、「小臀筋」、3種類の筋肉があります。
小臀筋はお尻のインナーマッスルで、骨盤と足の関節をつないでいる筋肉、中臀筋はお尻の側面を支える筋肉です。そしてこれらをすっぽり包み込む形で、いちばん外側を覆っているのが、大臀筋になります。
大臀筋の作用は?
1.股関節や足の動きを支える
いちばんメインになるのは、足の動作をつかさどる役割です。
- 足を外側に開く
- 足を内側に閉じる
- 太ももを外側に回転させる
- 足を後方に振り上げる
などの動作を担っています。
足を前方に振り上げる動作以外は、ほとんどの動きに大臀筋が関係しているといってもよいでしょう。ちなみに、足を前に振り上げる動きを担当しているのは腸腰筋で、これは下腹部から骨盤へ向かって伸びた筋肉です。
スポーツをしている方は、走る、飛び上がる、蹴るといった動作、日常生活の中では、歩いたり、いすから立ち上がる、階段の上り下りなどの動きが大臀筋と関係します。
2.骨盤を安定させる
人の骨格は周りの筋肉の支えによって、正しい形、位置を保っています。
大臀筋が支えているのは骨盤です。大臀筋が単独で支えているというよりは、腰やお腹、背中の下部など、骨盤を囲んでいるいくつもの筋肉とバランスよく引き合うことで、骨盤を正しい位置、角度にキープしているのです。
大臀筋が弱ると筋肉のバランスが崩れ、骨盤の角度がずれたり、ゆがみが生じる原因になります。
3.お尻の形を整える
筋肉図で大臀筋を見てみると、本当にお尻そのものの形をしています。
お尻の形は、中臀筋や小臀筋など、いくつかの筋肉で構成されています。ですが、いちばん外側にあるだけに、お尻のシェイプを左右するのは、やはり大臀筋です。
お尻をボリュームアップしたい、お尻をキュッと引き上げたいという女性は、大臀筋をトレーニングすることでシェイプアップすることができます。
大臀筋は弱りやすい
年令を重ねるとともに、筋肉量、筋力ともに低下していくのは避けられないことですが、筋肉の中でも弱りづらい筋肉と、弱りやすい筋肉とがあります。
大臀筋は、実は弱りやすい筋肉に入ります。
最も低下しやすいといわれているのが、太ももの前面にあたる大腿四頭筋で、年をとると膝が痛くなる方が多いのは、ここの筋肉が衰えるからなんです。
そして、2番目に低下しやすいのが、実は大臀筋なのです。大臀筋は大きな筋肉ですから、弱ったり痩せたりしてしまうと、影響は小さくありません。
大臀筋が弱った場合に、具体的にどのようなトラブルが発生しやすくなるかを紹介します。
歩行のトラブル、転倒しやすくなる
大臀筋は足をさまざまな角度に動かす筋肉ですから、筋力が低下すると、足の上げ下げや歩行といった、足のパフォーマンスも低下します。
股関節が大きく開かなくなるため歩幅が狭くなり、つまづきやすくなったり、転倒しやすくなります。
また、前述のように、いすから立ち上がるときや、階段を上り下りするときに体を安定させるのも大臀筋の機能ですから、こうした動作を行う場合にふらついたり、転倒したりといった事故の可能性も高くなります。
特に、いすや階段では体が不安定になる時間が長いため、大きな事故、怪我につながりやすく、危険です。
腰痛
大臀筋を含む、お尻や腰周りの筋肉が支えることで、骨盤が正しい位置に維持されている、ということは解説しました。
当然、大臀筋などが弱ると、骨盤が下がったり、傾いたりしやすくなります。
人の骨格は、頭のてっぺんから背骨、骨盤へかけて、ちょうど1本の心柱が通っているようにまっすぐなラインでバランスをとっています。でも、骨盤が前や後ろに傾くと、そのラインも前方や後方へずれてしまい、そうなると、背中の筋肉を使って体のバランスを取ろうとします。
その結果、背中のいちばん下、土台にあたる腰の筋肉に強い負担がかかり、腰痛に発展することになります。
冷え性、生理痛、尿もれ
骨盤の位置がずれると、骨盤を支えている筋肉にも負荷がかかり、血液の流れが悪くなります。腰周りや下腹部には内臓が集中しており、また太い血管も通っていますから、腰周りの血流が悪化すると、お腹全体、そして体全体の血流に大きく影響します。
その結果、お腹が冷えたり、腹部の筋肉がこわばることによって生理痛がおきたり、冷え性につながったりします。
また、骨盤がゆがむことで肛門付近の筋肉がゆるんでしまうことがあります。筋肉がゆるむとしっかりと力を加えることができなくなり、尿もれの原因になります。
何かの拍子でお腹に力が入ったとき、腹筋で押し出された尿を筋肉でとめておくことができなくなるため、もれにつながってしまうのです。
大臀筋の鍛え方
重要性を知ってみると、大臀筋を鍛えたくなってきたのではないでしょうか?
若い頃は、たとえば学校への行き帰りに歩くだけで、足やお尻の筋肉はある程度鍛えられましたが、残念ながら年令を重ねると、残念ながら日常的な動作だけで筋肉を維持するのは難しくなります。
1日のスケジュールの中にエクササイズを取り入れて、健康的な下半身を手に入れましょう。
大臀筋のトレーニングはたくさんの種類があります。その中から、比較的簡単にできるもの、体を痛めるリスクが少ないものを5つ、ピックアップしました。
1.ステップアップ
小学校の体力測定でやった、踏み台昇降運動です。
- しっかりした台を用意し、右足を乗せます。お尻の力で体を持ち上げ、台の上に両足でまっすぐ立ちます。
- 左足をゆっくりと床に戻して、最初のポジションに戻りましょう。
- 両足で行います。
台に足を乗せるときは、足の裏をしっかりとつけ、爪先立ちにならないようにします。また、体を持ち上げるときは、台に乗せたほうの足とお尻で体を持ち上げましょう。
床につけた足で床を蹴ってしまったり、勢いをつけないように気をつけます。台の高さは階段より少し高いくらいでよいと思います。高すぎると膝を痛めやすくなります。楽にできるようになったら、ダンベルを持って行ってもよいでしょう。
2.ヒップリフト
大臀筋のエクササイズとして人気のあるトレーニングです。
- 膝を立てて床にあおむけに寝ます。膝の角度は90度くらい。
- そのまま、お尻を高く持ち上げます。足やかかとが床から離れないようにしてください。
- お尻に力を入れたまま、2秒ほどポーズをキープし、ゆっくりと戻します。
最初は床に両手をついて体を支えるとよいでしょう。手を胸の上に置くと、難易度が上がります。
3.シングルレッグレイズ
- 両足を伸ばして床にあおむけに寝ます。両手は体を支えるために両脇に置いてください。
- 膝が曲がらないようにして、片足をゆっくりと持ち上げます。しばらくキープしたら、またゆっくりと戻します。
- 両足で行ってください。
レッグレイズは腹筋のトレーニングとしてよく知られていますが、足を持ち上げる動作をコントロールしているのは大臀筋ですので、お尻もしっかり鍛えられます。
腹筋と一緒に大臀筋も鍛えられるトレーニングです。
4.ワイドスタンス・スクワット
足を広めに開いて行うスクワットは、大臀筋への高い効果が期待できます。姿勢によって効く部位が異なってきますから、やり方をよく見てくださいね。
- 足を肩幅と同じくらい、または少し広いくらいに開いて立ちます。背筋を伸ばしすぎず、力を抜く感じで立ったほうがやりやすいです。
- お尻を後ろに突き出すようにしながら、膝を曲げます。
通常、スクワットは体をまっすぐに立てた状態で膝だけを曲げる感じですが、ワイドスタンス・スクワットは、股関節をメインに曲げるイメージです。体は前屈してもかまいません。 - お尻を突き出して腰を落としたら、ゆっくりと最初のポーズに戻ります。
太ももが床と平行になるくらいまで腰を落とすのが理想的ですが、慣れないと膝を痛めるリスクがありますので、こだわらなくてもかまわないでしょう。
ポイントは体を前に傾けてお尻を突き出すこと。お尻を出さないと太ももの筋肉にばかり負荷がかかってしまい、効率が悪くなります。
5.ワンレッグデッドリフト
- 両足を軽く開いて立ち、片方の足を後ろへ上げていきます。
- 足を上げると同時に体を前屈させていき、上げた足と胴が床に平行になるようにポーズを作ります。
体全体で、アルファベットの「T」の字を作る感じです。 - 一呼吸おいてから、ゆっくりと最初のポーズに戻ります。
軸足のほうは、膝を軽くまげるとふらつきづらくなります。
どのエクササイズも、大臀筋を意識して、筋肉に力を入れるようにしながら行うと、より効果的です。
まとめ
大臀筋をしっかり鍛えることで、ヒップアップ、歩行トラブルの予防、冷え性の解消などの効果が期待できます。また、それ以外にも、便秘の解消や、基礎代謝の向上なども、大臀筋トレーニングの効能です。
意外とおろそかになっているお尻の筋肉を、ちょっと見直してみてください。