筋トレ器具を自作する方法!材料と作り方のコツ・注意点まとめ
自宅で筋トレをしようと考えたらまず器具を揃えなくてはなりませんが、器具は必ずしも購入するべきとは限りません。筋トレ器具を自作してしまうのもひとつの方法です。
筋トレ器具の中には素人が自作するのは事実上無理なものがありますが、特別な技術がなくても自作できるものも少なくありません。自作することには経済的な理由も含めていろいろなメリットがあります。
今回は筋トレ器具を自作するための方法、注意点をご紹介します。
自作に向いている筋トレ器具
自作するのに向いている筋トレ器具の特徴をまずはご紹介します。
難しい技術が必要ないもの
難しい技術がなくても素人が作れるものに限定して挑戦しましょう。
特別な技術がないと作れないような筋トレ器具を素人が作ろうとしたらかえって危険です。例えば、ジムに置いてあるようなマシンやパワーラックなどを見るとわかりますが、溶接技術が多用されています。
鉄と鉄をつないだり、くっつけて固定するには溶接技術が必要になりますが、これは普通の一般人には無理な相談です。専門の技術もそうですし、溶接のための専門の機材も必要ですからとても素人向きの方法ではありません。
その意味で本格的なマシンを作ろうとしたらかなり無理があることがわかります。同様に、バーベルやダンベルを自作するのも現実的ではありません。バーベルやダンベルは正確な重量に加工しないといけませんし、特殊な工作機械も必要です。自作レベルをはるかに超えています。
材料が容易に手に入るもの
筋トレ器具を作るには材料を入手する必要がありますが、ホームセンターやネットで買える材料で作れるものにしましょう。特殊な材料がないとできないものだと作ることも難しくなります。
費用が高くないもの
費用があまりにも高くなってしまうものも自作向きではありません。自作の大きなメリットは費用を安くできることでもあるからです。
筋トレ器具を自作するために必要な材料
筋トレ器具を自作する際に使える材料をご紹介します。これらはすべてホームセンターで手に入ります。下記の他にも細かいボルトや工具が必要になることもあります。
単管パイプ
建築現場で使われている単管パイプが器具自作の主役になります。太さは直径48.6ミリのものが標準的です。材質としては鉄製のものが多いですが、真鍮製やステンレス製のものもあります。
真鍮製だと鉄に比べて硬度がかなり落ちますし、変形しやすいので避けましょう。
ステンレス製のものは錆びないのがメリットです。単管パイプの長さは1メートルから6メートルのものまでが50センチピッチで売っています。
パイプジョイント
パイプ同士をつなぐのがパイプジョイントと呼ばれる部品です。建設現場では足場を頻繁に組み立てたり、分解を繰り返しますので、パイプジョイントよりもクランプという部材が多用されますが、1度組んだらそのまま使う筋トレ器具であればパイプジョイントの方が見た目が圧倒的に綺麗です。
パイプジョイントには2本のパイプを90度の角度で固定して繋ぐもの、3本のパイプを3方向に繋ぐもの、2本のパイプうち1本を貫通させて固定し、もう1本を下から差し込んで固定するタイプなどがあります。これらのパイプジョイントと単管パイプを組み合わせることでかなりの種類の筋トレ器具を自作することが可能です。
ゴムキャップ
単管パイプが床と接触する先端部分などには単管パイプ専用のゴムキャップをはめるようにします。パイプの先端部分がむき出しのまま床に置いたり移動したりすると床に傷がついてしまうからです。
床への接地部分だけでなく、先端部分がむき出しになっているところは安全のためにも必ずコムキャップをはめるようにしましょう。
木材
フラットベンチなどのベンチ系のものを作るに際しては木の板が必要になります。
いろいろな幅や厚みのものが売っていますから、できるだけ加工が少なくて済むものを選びましょう。
ウレタンスポンジと合皮レザー
ベンチ系の器具では必ず仰向けに寝て運動することになりますが、板がむき出しのままでは、背中が痛くて運動しにくいです。そこで、板の上にウレタンスポンジと呼ばれる分厚いスポンジを敷いて、それを合皮レザーで包むようにして加工します。
ウレタンスポンジにはいろいろな硬さや厚さのタイプがありますから、実際に触ってみて確認した方がいいでしょう。触った感触としてはやや硬いと思えるぐらいのものの方が、実際のベンチとして加工してみると使いやすいです。
自作筋トレ器具の強度の問題
筋トレ器具を自作するに当たって、気になるのが強度の問題です。メーカーが作る筋トレ器具であれば、鋼材の厚みや負荷がかかることによって生じるたわみや捻じれなどを計算して、普通の使用であれば安全なように設計されています。
もちろん、メーカー製の器具であっても、想定以上に重量を積み過ぎるなどしたら破損の危険があります。外国製のマシンに「決して重量を改変してはならない」という注意書が貼ってあるのはそのためです。
メーカー製のパワーラックやベンチプレス台であれば、強いものなら耐荷重量が1トン以上になります。鋼材の種類や厚さ、溶接などがその重量に耐えられるように細かく計算されて設計されています。
筋トレ器具を自作するときにメーカーのような細かい強度計算は難しいですが、主要な材料である単管パイプやパイプジョイントの強度から作る器具の強度をある程度計算することができます。
単管パイプの強度
単管パイプの鋼材の肉厚は2.4ミリのものと1.8ミリのものがあります。2.4ミリのものの方が強そうなものですが、必ずしもそうではありません。材質が同じであれば肉厚が厚い方が強度があるのは明らかですが、材質が違えば状況が変わってきます。
単管パイプは厚さ2.4ミリの炭素鋼のものが最も普及していますが、1.8ミリのものは高張力炭素鋼と呼ばれるグレードが高い鋼材なため、この両者を比べると1.8ミリのパイプの方が強度が高いです。
筋トレ器具を自作する際には手に入りやすい肉厚2.4ミリのもので強度的に十分です。単管パイプの曲げ強度はかなり強いです。肉厚2.4ミリの単管パイプの場合、長さ1メートルの中央にかかる負荷をかけたとして、456キロまで耐えます。
1本のパイプでこの重さを超えると曲がるわけですが、実際のトレーニングではバーベルの左右に負荷が分散されますので、重量が200キロだとしても片方のラックやセーフティーバーにかかる負荷は100キロになります。300キロでも150キロずつですから、事実上強度的な問題はないと言えるでしょう。
パイプジョイントの問題
単管パイプと単管パイプをつなぐパイプジョイントは厚みのある鋼材の鋳造物ですので、筋トレ器具の部品として使って、これ自体が簡単に破損することは考えにくいです。しかし、パイプを六角穴付きのイモネジで締めて留める構造になっているため、イモネジが緩んだり、パイプの差し込みが甘いとパイプが抜けてしまう危険があります。
パイプをジョイントの中に深く差し込んでイモネジを六角レンチできつく締めるようにしましょう。パイプジョイントの中には小さいネジでパイプを留めるタイプのものがありますが、それではパイプを留める強度が弱いので、六角レンチ対応のものを選びましょう。イモネジもできるだけ太いものがついているものが強度的におすすめです。
イモネジは緩むと危険ですので、定期的に緩んでいないかをチェックするようにしましょう。
筋トレ中の器具の扱い方の注意点
以上の考察で器具を作る際の材料の強度は十分であることがご理解いただけたと思いますが、使い方が乱暴だと破損する危険がありますから注意しましょう。長さ1メートルの単管パイプの曲げ強度が456キロだから強度的に大丈夫だと言っても、それは静かに重量物を置いた場合のことです。高いところからバーベルを落としたりしたら壊れます。これはメーカー製のパワーラックやベンチプレス台であっても同様です。
重さ5キロの鉄球を高さ1メートルから落とすと500キロの衝撃になります。100キロのバーベルを10センチの高さから落としたらそれだけで1トンの衝撃になります。
ジムにあるベンチやセーフティーバーが壊れるのは乱暴にバーベルを落としたときです。この点を必ず注意しましょう。自作したベンチプレス台やスクワットラックにバーベルを戻すときは必ず静かに置くように注意しましょう。
自作できる筋トレ器具
ここまで、筋トレ器具を自作するための材料や強度について考察しましたが、これらを踏まえて以下、どのような器具を実際に自作できるかをご紹介します。
チンニングスタンド
チンニングスタンドは個々の単管パイプの長さを調節してパイプジョイントを組み合わせるだけで作れるので、比較的自作しやすい筋トレ器具です。
気をつけるべきはチンニングバーまでの高さです。
一般住宅の部屋の天井までの高さは220センチぐらいですから、チンニングバーの位置が高過ぎると使いにくくなります。
ディッピングスタンド
ディッピングスタンドもチンニングスタンドと同様に作りやすいのが特徴です。
高さの位置がチンニングスタンドよりもはるかに低くて大丈夫ですし、コンパクトに作れるでしょう。自分の身長に合わせて使いやすい高さに調節しましょう。
フラットベンチ
フラットベンチは形は単純ですが、自作するとなるとなかなか手間がかかります。パイプの長さにしても短いものが必要になりますので、加工の手間が多いです。
フラットベンチで難しいのがパイプで作った骨組みの上に乗せる板部分の加工です。板の大きさを加工して、パイプ部分にしっかりと取りつける加工が必要になります。
パイプにドリルで穴を空けて下からネジで留めるのが確実な方法です。ぐらつかないようにネジの本数も多めにしておきましょう。
インクラインベンチ
インクラインベンチは角度を自在に調節できるものが理想的ですが、単管パイプを加工して作るとなると、角度を固定したものにする方が作りやすいです。角度を調節できるようにしようと思ったら、加工難度が格段に高くなります。
角度としては35度から45度あたりが丁度いいでしょう。スポーツクラブにあるような固定のインクラインベンチも35度から45度のものが多いです。このあたりの角度が大胸筋上部によく効きます。
ベンチプレス台
ベンチプレス台を作るに際して注意すべきは、バーベルを戻すラックの加工と高さ、セーフティーバーの高さです。
ラックについては専用のベンチプレス台のようなラックの形状に加工するのは難しいですから、バーベルを戻す位置のパイプに穴を空けてボルトの頭が出るように加工します。そのボルトの突起でバーベルが引っ掛かるようにするわけです。
この場合、パイプの直径方向に垂直にボルトを貫通させることになります。突起の高さはバーベルがすべり落ちてこない高さで、かつバーベルをラックから外したり戻したりする際に邪魔にならない程度の高さが使いやすいです。10ミリあたりが適当でしょう。
ボルトが細いと折れやすいので、できるだけ太いボルトを使用してください。
次に、ラックの高さとセーフティーバーの高さについてですが、ピン1本で高さを調節するような構造では非常に加工が難しいですから、決まった高さに固定しましょう。この高さは1度作った後では変えられませんから、自分に合った高さをよく確認してから作りましょう。
セーフティーバーも同様にバーベルのバーを胸を降ろした状態で当たることなく、かつ、つぶれた時に降ろしやすい高さを確定する必要があります。セーフティーバーはベンチプレス台と一体にして作るのでもいいですし、セーフティーバーだけを独立して動かせるようにベンチプレス台とは別々に作るのでもかまいません。
ベンチプレス台でライイングトライセップスエクステンションなどを行なうのであればセーフティーバーが邪魔になりますから、その場合は別にして作った方が便利です。
セーフティーバーを作る際には、強度を強くするためにバーベルを受けるパイプの下に並行してもう1本パイプを設置して、これらの平行になっているパイプの間に別のパイプを立ててつなぐ構造がおすすめです。
セーフティーバーを別にして作る場合、足場をT字を逆にした形になるようにパイプとジョイントを組み合わせるようにします。そうすることでセーフティーバーの足場が安定して倒れないようになります。
スクワット台
スクワットを行なうためにパワーラックを作ることもできますが、バーベルを戻すためのラックの加工などを考えるとスクワットラックとして作る方が作りやすいです。
ジムにあるパワーラックが使いやすいのはラックやセーフティーバーの高さを細かく調節できるからですが、自作する場合、ラックの高さもセーフティーバーの高さも固定したものになりますので、スクワットラックとして作った方が、加工方法としても、実際に使用するにしても使いやすいです。
ここでも、ベンチプレス台と同様にラックの高さとセーフティーバーの高さに気をつけましょう。スクワットラックの場合はセーフティーバーを含めて一体として作る方がいいでしょう。
プリーチャーカールベンチ
プリーチャーカールベンチの自作することも可能です。座るタイプにするより立った状態で使うタイプの方が簡単ですが、座るタイプでも可能です。
プリーチャーカールベンチは肘が当たるクッションが固すぎたり、厚さが薄いと使いにくいですから、特に注意しましょう。
シットアップベンチ
シットアップベンチも自作できる器具のひとつです。腹筋運動するベンチ部分だけでなく、足を引っ掛ける部分も作る必要がありますし、簡単なようでけっこう複雑な形になっているのがシットアップベンチです。
これも角度調節型にはしにくいですから、使用する際に手に持つ重りなどで強度を調節することになります。
まとめ
筋トレ器具を自作する際の材料、作る際の注意点などをご紹介しました。
建設現場の足場として主に使われている単管パイプとパイプジョイントという部品などを利用することでかなり多くの種類の筋トレ器具を自作することが可能です。
材料費にしてもかなり安くできますから、メーカー品を購入するよりも経済的なメリットがあります。今回ご紹介した器具の材料はすべてホームセンターで手に入るものばかりですから、材料の入手は簡単にできるでしょう。
上記の器具を自作する前に必ず図面を描いてみることをおすすめします。筋トレ器具は単純な構造ではあっても、それなりに部品の点数もありますし、細かい寸法を決めておかないと作る際にも出来上がったものにも不備が出ます。立派な図面ではなく、簡単な手描きのものでかまいません。
必要な単管パイプの長さ、パイプジョイントの種類や個数、ボルトなどの細かい部品がどれだけ必要なのか、各部の寸法がわかるようにしておくと作業が格段にスムーズになります。