見落としがちな腸腰筋の重要性と腸腰筋の効果的な鍛え方
今回は腸腰筋についてです。腸腰筋とはどの部分の筋肉なのかいまいちよくわからない方も多いと思われます。
細かく言えば違うのですが有名な言葉で表すと「体幹」です。趣味として筋トレをしている方はあまり気にされたことのない部位でしょう。なぜならいくら鍛えても全く見た目に反映されないからです。
ですが一度は解剖学を学んだ人であればこの腸腰筋を必ず優先的に鍛えます。ここでは、その理由を順を追って説明していきます。
腸腰筋とは?
まずはじめに腸腰筋とは、身体の最深部にあり、脊椎と股関節(腸骨筋は骨盤と股関節)をつないでいる筋肉です。コアトレーニングやインナーマッスルと言ったとき、指しているのはこの腸腰筋のことです。
「体幹トレーニング」などで言う「幹体」を支えるのは腸腰筋のことです。
ちなみに腹筋や背筋で体幹を支えるのは可能ですが、非常に難しいです。
- 第一に腹筋背筋はそれほど強い筋肉ではありません。薄い筋肉です。
- 第二に腹筋背筋は脊椎をコントロールしません。倒れそうな達磨落としをまわりであたふたと支えようとしているようなものです。
- 第三に腹筋背筋は曲げることが仕事であり、支えることが仕事ではありません。
もちろん全ての骨格筋がそうですが、腸腰筋は微妙なバランスを股関節と脊椎で取ります。収縮とストレッチでグラグラする脊椎をコントロールします。そのことで体幹を作ります。
腸腰筋を鍛える筋肉トレーニングは従来は存在しないと言われてきました。
存在します。
ただそれができるのは、『腸腰筋ができている人』というパラドックスはあります。
例えば腹筋や背筋だと筋肉は分かりやすいので、鍛えやすいのです。大腿四頭筋も見えるので、鍛えやすいです。大胸筋もそうです。外にあって「見える」ものは鍛えやすいのです。
筋トレやボディビルディングの世界では、鍛えたい筋肉をしっかり意識するように言われます。しっかり見て、触って、内側から感じて鍛えると効果が違います。
…では腸腰筋は?
腸腰筋は意識できるでしょうか?
あまりに奥深くにあって見えません。
他の表面の筋肉のように肌越しに触ることもできません(もちろん触れる部分もありますが)。
何層もある腹筋を剥いで、腸を取り出した奥に「腸腰筋」はあります。
そんな鍛えることが難しい、または不可能とまで言われていた腸腰筋ですが、運動をしている人のみならず、一般の方にも意識してほしい部位と言えます。
腸腰筋が衰えてしまうと
もし、この「腸腰筋」が衰えたらどうなるでしょう。
太ももが上がりにくくなるためにバランスが歪んで転びやすくなります。
また、そのために骨折する危険性もでてきてしまうのです。
他には姿勢が悪くなったり、結果腰痛になってしまったり…
しかも胃や腸の消化器官の内臓とも関係しているために、「腸腰筋」が弱まるとそれらの働きが悪くなり、消化不良やむくみといった悪影響までもたらしてしまいます。
具体的な腸骨筋を鍛える筋トレ方法
それでは実際に具体的な筋トレ方法をご紹介していきます。
特に身体が温まり、柔らかくなっている入浴後にやるとベストです。
ここでは2つの運動をご紹介します。
1.腸骨筋に効く体幹運動
- 背筋をのばし、上半身が骨盤上にまっすぐのびているか確認して立ちます。
- 骨盤に両手をあてがい、片足の膝をきっかり90度に曲げるように太ももをアップさせましょう。※アップした太ももが床と平行になると良い
- また、片足アップをしていても、骨盤が歪みなく左右対称かチェックして下さい
- 10秒キープ
- 足を下ろしたら、反対の足でも同じことをやります。(左右それぞれ10回ずつ)
2.腸骨筋に効かせる腹筋運動
- 仰向けに寝て、両膝を折り曲げて椅子の上にのせ、足首はフレックス(踵を前に押し出す形)にしておく。(椅子にのせている膝下と太ももが直角になっている状態がベスト)
- 頭の後ろで手を組み、下腹に力をこめて息を吐きながらゆっくりと上半身を起こし、息を吸いながら床に戻る。(大体10回くらいを目安にしてください)
腸腰筋のストレッチ方法
筋トレを行った後は必ずストレッチをしましょう。
怪我の防止であると同時に筋トレの効果を増やすことができます。
体幹のインナーにある腸腰筋のストレッチは非常に重要な部位でありながら、ここをストレッチしようとすると、どうしても骨盤の前傾や、腰椎前弯を招きやすく、腰痛リスクが高くなるものが多いです。
しかし、ストレッチポールを用いることで誰にでも安全に簡単にストレッチができる方法をご紹介します。
ストレッチポールがない場合は枕などでも構いません。
- 腰の下にストレッチポールを当て、片方の太ももが胸につくくらいしっかり抱きます。(片方の足をしっかり胸に付け背中を丸めることで骨盤が後ろに傾いた位置となり、腰痛リスクが減ります)
- ストレッチ側の足を宙に浮かせ、地面と平行になるようにまっすぐ伸ばします。
- ゆっくり足の重みで腿の付け根あたりが心地よく伸びたと感じたら、呼吸をしながら15~30秒キープします。
ポールで落差をつくり、足の自重で伸張感のコントロールがしやすく、伸び感が感じられやすいストレッチです。
腰痛の原因?
腰痛の原因といっても様々ですが、多くの治療家なども原因の一つとして取り上げるのがこの腸腰筋です。
腰痛は日本人の方であれば誰もが一度は経験したことがあるはずです。
前述しましたが、背骨を中央にして、ハの字に広がっている大腰筋、骨盤の腰骨あたりから足の付け根の内側に繋がっている両サイドの筋肉である腸骨筋。
どちらも重要な筋肉ですが、腰痛に関しては特に大腰筋が大きく関わっています。
なぜなら、単純に体の柱である背骨を中央で支え、下半身に動きを繋げるという作用があるからです。
え?体幹の筋肉って、腹筋と背筋じゃないの?腰痛にはこれを鍛えるのが大事なんでしょと思われている方も多いと思います。
それも間違いではありません。
ですが、勘の良い方はもうお気づきかもしれませんが、腸腰筋です。
この筋肉の機能が低下してくると、単純に体を支える力が弱くなり、負担がかかりやすくなります。
長時間の立ち仕事や座り仕事で、その維持する力が低下してくると、そこに疲労が溜まり、悪さをしてきます。
肩凝りや腰痛で、筋肉の中にゴリっと堅いものがあって、それを押すとズーンと痛みが走ることはありませんか?
肩だと、頭や腕の方までしびれるような重だるさが響いてきたり、腰を押すと下半身の方まで痛みが走ったりするのを経験した人もいるかもしれません。
この凝りのようなものをトリガーポイントといいます。つまり引き金になる部分ということですね。ここの部分の感覚が過敏になっていると、慢性的な痛みがジクジク続くようなことがおこるといわれています。
肩や腰の筋肉ならそうやってほぐすことも可能ですが、大腰筋のように腹筋、内蔵の奥の筋肉に凝りができてしまうと、なかなか触ってほぐすということは難しくてできません(整体などでは触ることもあります)
実は、しつこい慢性的な腰痛は、この大腰筋のトリガーポイントであることが多く、そしてそれができる原因は、筋力低下などによるものだと推測されるのです。
腰痛改善のためには、体幹トレーニングも大事ですが、体幹と下半身をうまく使うことで、本当に安定した体を作ることが必要です。
足腰を鍛えるとよくいいますが、まさに大腰筋を鍛えることこそ足腰を鍛えることそのものです。
このように実際に視覚的に判断のできない部位なので自分では鍛えてあるのか、あまり鍛えられてないのかが判断しにくいです。
ただし、一般の方でも軽く鍛えて欲しい部位です。
プロのスポーツ選手の方や筋肉量を増やしたいボディービルダーの方、さらには筋肉トレーニングを趣味としている方には特にこの見落としがちですが、腸腰筋を鍛えてほしいです。
見た目に反映はされませんが、運動能力やバランスに顕著にあらわれるでしょう。